デンマークの旧精神科病院、1888年の病棟が精神医学の博物館に CFメラーが改修
デンマークの設計事務所CFメラーが、フュン島の町ミデルファートにある旧精神科病院の建物を、博物館「マインド・ミュージアム」に改修した。デンマークの精神医学の歴史と、この病院そのものの歴史を伝える。設計は、元の建物の「明快な空間構成」に導かれたという。
何が起きたのか
改修したのは、1888年に建てられた元の病棟の一つである。外観を残して修復しつつ、動線と使い勝手を改め、現在の規則に合うようにした。元の入口も復活させた。事務所のパートナー、ルーネ・ビェルノ・ニールセン氏は、病院は1999年まで使われていたので、建物は博物館の背景ではなく、博物館が読み解く歴史の一部だと話す。訪れる人は、精神医学の歴史が実際に起きた場所でそれに出会う。
1階は元の病院と最も強く結びつく階とし、もとの意匠に沿った素材と色で、建物の歴史を展示する。2階は明るく現代的な仕上げで対比させ、精神医学と心の健康をめぐる今の問題を扱う。展示は元の病室のあいだに点在し、新たに開けた開口で見通しとつながりを生む。地下は、専門の団体や地域のグループが使う活動の場になった。病院の敷地をめぐる地下トンネルにつながっており、いずれ「マインドウォーク」という見学路として公開する。新しい階段や開口には油仕上げのオーク材を使い、カフェや彫刻の庭も加えた。展示空間はクムルス・エージェンシーが手がけた。
背景
CFメラーによれば、元の病院は日光と緑に恵まれた「小さな町」として計画された。この種の建物はデンマークに六つ残るが、いまも精神科病院として使われているのは一つだけである。博物館は学びの場であると同時に、心の健康に取り組む人や団体が集う場所でもある。ニールセン氏は、情報を受け取るだけでなく、人が会い、話し、立ち止まって考える場所にすることで、近づきにくい話題に開かれた場をつくれると述べた。
日本にとっての意味
デンマークのこの病院は1999年に役目を終え、建物は歴史を語る側に回った。日本では、精神科の入院がいまも大きな規模で続いている。厚生労働省によると、2024年10月1日時点の精神病床は31万6147床で、全病床の21.5%を占める。2002年の35万5966床と比べても、22年で約4万床減ったにとどまる。
入院の長さも違う。2024年の病院の平均在院日数は、一般病床の15.5日に対し、精神病床は255.0日だった。前年より8.2日短くなったものの、一般病床の16倍を超える。病院だった場所で精神医学の歴史を見せるという発想は、精神科病院がまだ多くの人の暮らしの場である日本では、別の重みを持つ。