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建物の外観は人を幸せにするか ヘザウィック氏の団体、英国の街並みを測る150万ポンドの研究

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英国の建築家トーマス・ヘザウィック氏が2023年に立ち上げた団体「ヒューマナイズ」が、英国の街並みを美しくすることで人の幸福感を高められるかを探る研究を始めた。題名は「デリバリング・ヒューマナイズド・プレイシズ」。グラスゴー大学と、研究資金を配分する英国研究イノベーション機構(UKRI)との共同事業で、規模は150万ポンド(約3億円)である。

何が起きたのか

研究の焦点は、建物の外観と街路のデザインだ。それが健康や、地域への誇りと帰属意識にどう働くか、そこにどんな社会的・経済的な利点があるかを調べる。既存の知見を土台に、建物が幸福感に与える影響の証拠を固めるという。地域の住民の声を中心に据え、暮らす場所を左右する決定に住民がもっと関われるようにすることも掲げる。成果は、市長や開発事業者が再開発や開発に生かせる資料にまとめ、政策にも影響を与えたいとしている。

ヒューマナイズは、退屈で魂のない開発がまん延する「ブランデミック」に挑むと言う。同団体の調査では、英国の人の76%が建物の見た目は心の健康に影響すると考えている。ヘザウィック氏は、街の建物は毎年何百万人もが前を通って体験し、気分を大きく左右するのに、何十年も効率とコスト、中で使う人の都合ばかりで設計されてきたと話す。通行人が味わってきたのは「個性のない通りの連続」で、孤独がまん延する時代に建物の外側が社会に何をできるかは、ほとんど考えられてこなかったという。

背景

研究は、英国政府がイングランドに新しい町を建設する計画を進めるさなかに始まる。ヘザウィック氏は、何世代も見なかった規模で住宅と地域が建てられようとしているいま、人の体験を中心に据える「またとない機会」だと述べた。変化は「測ることから得られる深い理解」から始まるとも語っている。

ヒューマナイズは、同氏の著書『HUMANISE 建築で人間味のある都市をつくる』(邦訳、草思社)の考えを実行に移すための団体で、その一つが「退屈な建物を終わらせる」ことだ。ただ、批判もある。著述家のオーウェン・ホプキンス氏は、この運動を「建築環境の評価として、ひどく単純化した見方」と評し、設計の質が落ちる原因も、その解決策も示していないと指摘した。

日本にとっての意味

日本には、建物の見た目そのものを地域が縛れる法律がある。2004年の景観法は、良好な景観を「国民共通の資産」と位置づける。自治体が景観計画を定めると、その区域で建物を新築したり外観や色を変えたりする人は届け出が必要になる。計画に合わなければ自治体は設計の変更を勧告でき、条例で定めた行為については、計画に定めた形態意匠(形やデザイン)の制限に合わせるよう命じることもできる。国土交通白書2025によれば、2025年3月末時点で822団体が景観行政団体になり、675団体が景観計画を定めている。

ただし法律の目的は、美しく風格のある国土や「潤いのある豊かな生活環境」をつくることにある。景観が住む人の心身にどう効くかを測り、その数字で開発の質を問おうとするヒューマナイズの研究は、規制とは別の方向から外観の価値を示そうとする試みといえる。