建築の収蔵品をじゅうたんの上で見る ロッテルダムのニーウェ・インスティテュートに「ラウンジのような」常設展示室
建築・デザインスタジオのSpace Popular(スペース・ポピュラー)が、オランダ・ロッテルダムのニーウェ・インスティテュートに、収蔵品を見せる常設の展示室「コレクション・ギャラリー」をつくった。同館が持つ、オランダ建築の歴史を記録した実物とデジタルの資料を展示する部屋である。床に敷いた色とりどりの格子模様のじゅうたんで、展示の区画を分けている。
何が起きたのか
展示室は館内の細長い空間にあり、ほぼ全体をじゅうたんなどの柔らかい素材で覆った。グラフィックデザイナーのマリアナ・ロバン氏と組み、デジタル印刷したじゅうたんの格子に合わせて展示室全体を配置した。じゅうたんには50センチ角の格子と色分けした区画があり、収蔵品を5つのテーマに分けている。
各区画には、ロブ・デン・デュルク氏がつくった木の展示台が並ぶ。台も区画ごとに色分けされ、表面はじゅうたん張りだ。上にはガラスのケースを載せて建築模型を見せ、ほかの木の棚は来館者が操作する画面になっている。展示室の脇には長さ40メートルのコンクリートの壁が続き、映像を映す壁も兼ねる。
背景
スタジオは、ふつうの展示室の「明るいミニマリズム」の反対をめざし、クラブやラウンジに近い場所にしたかったとDezeenに語った。暗めの色調と柔らかなグラデーションで、来館者に歩みをゆるめ、腰を下ろしてもらい、展示室でふだんより長く過ごしてもらうねらいだという。同館の学芸チームが組み立てた5つの物語を、決まった順路なしに、複数の人が同時に体験できるようにした。展示台も収蔵品もすべて50センチの格子に従っている。
展示室は2029年5月まで公開され、展示は「時事を反映する」ように入れ替わっていく。
日本にとっての意味
日本で建築の図面や模型を国として集めているのは、文化庁の国立近現代建築資料館(東京・湯島)である。2012年11月に設置され、翌年5月に開館した。文部科学省の行政事業レビュー資料によると、目的は近現代建築の資料の劣化や散逸、海外への流出を防ぐことにある。2021年1月時点で14件、約11万5000点を収蔵し、坂倉準三の設計資料だけで図面約3万枚にのぼる。
ただし同じ時点で、展示は春と秋の年2回の展覧会が中心で、展示面積は292.2平方メートル。開館からの入場者は累計約12万人だった。同じ資料は、展覧会の来場者数を成果の指標としながら、国民の理解を深めるという成果目標が不明確だとして、この事業を点検の対象に挙げている。
ニーウェ・インスティテュートは、収蔵品を常設で見せ、来館者が長くとどまる展示室をつくった。資料を守ることと、その資料を人に見てもらうことを、どう両立させるか。日本の建築資料館が抱える課題でもある。