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イスラエル、超正統派の兵役免除問題が総選挙の争点に浮上

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現地時間5日の月曜夜、イスラエル中部モディインで、兵役忌避の疑いで拘束された男性をめぐり、拘束に抗議する超正統派ユダヤ教徒数百人と警察が衝突した。この事態を受け、現地時間6日の火曜、野党指導者らがネタニヤフ首相を名指しで批判し、政権を取れば兵役免除を終わらせ、学生が入隊を拒む宗教教育機関への公費支出を止めると表明した。現地の10月27日に総選挙を控えるイスラエルで、長年くすぶってきた争点が選挙戦の前面に出てきた。

何が起きたのか

モディインでは、兵役忌避者とされる男性の自宅前に超正統派の住民数百人が集まり、一部が建物への突入を図って警察ともみ合いになった。デモ参加者は警官を「ナチ」と呼んだとされる。イスラエル軍は、兵役を忌避した者への取り締まりの一環として憲兵隊が同地で作戦を行ったとし、群衆が組織的に集まって拘束を妨害し兵士を危険にさらしたとした上で、取り締まりは今後も続けるとした。憲兵隊は結局、男性を拘束できないまま警察の護衛下で現場を離れた。

これに対し野党指導者らが相次いで声明を出した。野党党首ヤイル・ラピド氏は、男性の拘束後に集まった群衆が警官を「ナチ」と呼んだことに触れ、「この国に法の支配はないのか」とSNSに投稿し、治安相イタマル・ベングビール氏を「臆病者」と呼んで批判した。民主党のヤイル・ゴラン氏は、ネタニヤフ氏が連立維持のため徴兵逃れへの公費支出を続けてきたと非難し、今回の選挙を公費支出を止める機会にすべきだと述べた。

元参謀総長でヤシャルを率いるガディ・アイゼンコット氏は、自らの政権では「実質的な徴兵法」を制定し、兵員を増やすと述べた。元首相ナフタリ・ベネット氏も、自身が率いる政権下では「兵役に就かない者には1シェケルも渡さない」と公約した。

背景

イスラエルは男女とも兵役が義務とされるが、超正統派(ハレディム)の男性は長年、宗教教育機関(イェシバ)での学業を理由に兵役を繰り返し猶予され、免除対象となる年齢に達すると事実上兵役を免れてきた。ハレディムは人口1000万人超のうち約13%を占めるとされる。多くがトーラー研究への専念を理由に兵役を拒否し、世俗社会との統合が自分たちの信仰的な生き方を損なうと懸念する声もあるという。

この免除制度を政治的に支えてきたのが、シャスや統一トーラー・ユダヤ主義といった超正統派政党で、歴代のネタニヤフ政権で主要な連立相手となってきた。2024年6月、イスラエル最高裁は超正統派男性も兵役の対象であると判断し、入隊を拒む学生を抱える宗教教育機関への国費支出を打ち切るよう命じた。ガザ、レバノン、イラン、ヨルダン川西岸をめぐる軍事作戦が続く中で予備役の招集が繰り返され、軍は兵員不足を訴えている。この最高裁判断と兵員不足の双方が、長く手つかずだった免除制度の見直しを迫っている。

日本にとっての意味

「在学を理由に徴集を猶予し、分野で線を引く」仕組み自体は、日本も戦時に経験している。1943年9月の閣議決定で学生・生徒の徴兵猶予が停止され、同年10月2日公布の勅令第755号により満20歳の大学・高等専門学校生が徴集対象となったが、陸軍省は理工医系と教員養成系の学部などを入営延期に指定した。イスラエルで免除の線引きを動かしているのが最高裁の判断であるのに対し、日本ではこの猶予の線を裁判所ではなく政府自身が引き直していた点が異なる。

戦後日本は徴兵制そのものを置いていない。政府は1980年の答弁書以来、徴兵制度は憲法13条・18条の趣旨から平時・有事を問わず許容されないとの立場を取り、2015年の答弁書でも、この考え方は社会情勢等の変化によって変わらないと重ねて確認している。徴兵を前提としない日本では、兵員不足は免除を巡る対立ではなく、自衛官の募集充足率として表れる。2026年3月時点の充足率は88.1%、2025年度の採用計画達成率は72%にとどまっている。