仏ルノワール美術館の盗難絵画2点発見 6人拘束
フランス南部ニース近郊カニュ・シュル・メールのルノワール美術館で現地時間9月8日早朝に起きた盗難事件で、現地警察が盗まれていた絵画2点を回収した。事件に関連して6人が拘束されたが、起訴されたかどうかは発表されていない。盗まれた作品はパリのオルセー美術館が所蔵し、長期間カニュ・シュル・メールに預けられていたものだった。
何が起きたのか
盗まれたのは、ルノワールが1913年ごろに描いた「マダム・コロンナ・ロマーノ」と、1886年の「井戸のそばの若い女」の2点。犯人は合わせて4点を持ち出したが、逃走の際に残りの2点「ステファン・ピション夫人の肖像」(1895年)と「読書するココ」(1905年)は置いていったという。市長室が事件当初に示した推計では、被害額は合わせて900万ユーロとされた。
南フランスと東フランスにまたがる一連の警察活動で6人が拘束された。現地紙ニース・マタンによると、このうち2人が実行犯とみられている。カニュ・シュル・メールのブライアン・マソン市長は声明で、文化財不正取引対策中央局に謝意を示した。マソン市長は「この2点の作品は単なる美術品をはるかに超えるものだ。私たちの街の歴史、文化遺産、そしてオーギュスト・ルノワールがカニュ・シュル・メールに残した遺産の一部だ」と述べている。
背景
持ち出された4点はもともとオルセー美術館の所蔵品で、1995年からカニュ・シュル・メールの美術館に長期で預けられていた。フランスでは、国立美術館が所蔵品の一部を地方の美術館に長期貸与する仕組みが広く使われている。首都に作品を集中させず、地方の美術館の常設展示を充実させる狙いがある。
フランス文化省によると、4点のうち3点は「MNR」に分類される。第二次世界大戦後に回収されたものの元の持ち主が分からない文化財で、国が仮の保管者として預かっている。
日本にとっての意味
盗難の舞台となった美術館はルノワールが最後に暮らした家で、この町は日本の洋画とも縁が深い。国立アートリサーチセンターの作家データベースによると、1908年に渡仏した梅原龍三郎はルノワールの作品に強く心を動かされ、翌年カニュ・シュル・メールに本人を訪ねた。ルノワールの勧めでパリの画塾アカデミー・ランソンに入り、帰国前にもう一度ルノワールを訪ねてから、1913年6月に京都へ戻った。梅原はのちに文化勲章を受け、戦後の日本の洋画を代表する画家の一人になった。
梅原が手元に置いた師の作品は、いまも日本で見られる。国立西洋美術館の「ばらをつけた女」は、1978年に梅原が寄贈したルノワールの作品で、同館は筆遣いの粗さから最晩年に近い時期の作と見ている。今回見つかった「マダム・コロンナ・ロマーノ」も、ルノワールがカニュ・シュル・メールで晩年を過ごしていた1913年ごろに描かれた。