ヨルダンの巨大淡水化計画、気候資金がガス需要を固定化する懸念
ヨルダンが紅海沿岸アカバに建設する大型海水淡水化プラントに、国連の気候基金「緑の気候基金(Green Climate Fund、GCF)」が2.95億ドル(融資2.2億ドル+贈与0.75億ドル)を投じる。総事業費約60億ドルのこの計画は水不足対策の目玉とされるが、必要な電力のうち専用太陽光が賄うのは最大27%に過ぎず、残りはガス火力主体の系統から取る。気候適応のための投資が化石燃料への依存を長期に固定しかねないという指摘が出ている。
何が起きたのか
ヨルダンは紅海の港湾都市アカバに巨大な海水淡水化プラントを建設し、首都アンマン近郊まで400キロメートル以上のパイプラインで送水する計画を進めている。フランスのメリディアムとスエズが建設を主導し、完成予定は2030年。年間3億立方メートルの海水を淡水化する、世界でも最大級の施設になるという。
この計画への2.95億ドルの支援は、2025年10月のGCF第43回理事会で承認された。GCFの事務局長マファルダ・ドゥアルテ氏は「節目となる事業」と評価したが、GCFの独立技術諮問委員会からは事前に警告が出ており、気候活動家からも批判があった。
問題は電力だ。海水から塩分を除くには高圧で膜を通す必要があり、電力を大量に消費する。このプラント1基で、ヨルダンの水セクター全体の電力需要は2倍になるという。
近くに専用の太陽光発電所を建設するが、賄えるのは電力の最大27%にとどまり、残りは主にガス火力による国の系統電力に頼る。Climate Home Newsの分析によると、この非再生可能電力による年間排出量は、ガソリン車16万台分に相当するという。
背景
ヨルダンは世界で最も水不足が深刻な国の一つで、人口約1,100万人のうち半数の家庭は週24時間未満しか水道を使えない。気候変動による降雨減少に加え、シリア難民の受け入れによる人口増も水需要を押し上げている。隣国イスラエルからの水供給も、ガザ情勢をめぐる外交関係の悪化で先行きが不安定になっており、ヨルダン政府は水の自給を急務としている。
こうした事情から、淡水化計画は「戦略的な気候適応策」として位置づけられ、GCFの支援対象になった。GCFは開発途上国の気候対策を支援する世界最大級の多国間基金で、各国からの資金を融資や贈与の形で配分する。ただ、系統電力そのものが化石燃料中心である国では、適応のために造った設備を動かすほど排出が増えるという構造的なジレンマが生じる。GCFの広報担当者は、計画の設計は水の安全保障や財務面、気候面の複数の目的を「バランスよく最適化する」必要があったと説明している。
日本にとっての意味
同じ構造は沖縄にもある。沖縄県企業局の海水淡水化施設(1997年全面稼働)は、1立方メートルあたりの電力消費が淡水化を除く同局の施設を大きく上回る。企業局は渇水対応で2024年1月にこの施設をフル稼働させている。
渇水に備える設備が、動かせば排出増、止めれば省エネという形で、系統の化石燃料比率に縛られている。この点はヨルダンの構図と重なる。日本はGCFに初期拠出15億ドルを表明し、理事会に席を持つ主要ドナーでもあり、どの案件にどう資金を出すかの判断に加わる立場にある。