保護区の外から流れ込む油汚染、米NPOの衛星分析で判明
米国の環境NPO「スカイトゥルース(SkyTruth)」が衛星画像を分析した結果、2022年から2025年にかけて世界各地の海洋保護区に油膜が繰り返し流れ込んでいたことが分かった。発生源は保護区の外にある船舶や海底油田設備で、風や海流に乗って保護区内まで運ばれていたという。コンゴ共和国やスペイン、ルーマニアなどの保護区で、クジラやイルカ、ウミガメの生息地に影響が及んでいる可能性がある。
何が起きたのか
最も深刻だったのは、コンゴ共和国の大西洋沿岸にあるコンクアティ=ドゥリ国立公園だった。この海域では27件の油膜が検出され、合計880平方キロメートルに広がっていた。報告書によると、油膜は公園の外側にある3つの海底油田の施設から流出したとみられる。この海域にはサメやエイ、イルカ、クジラ、マナティーが生息し、オサガメやヒメウミガメの産卵地にもなっている。
地中海でも約417平方キロメートルの油膜が2つの重要な保護区にかかった。スペインの「地中海クジラ目回遊路」では45件の油膜が確認され、いずれも船舶が原因だった。フランス・イタリア・モナコが共有する「ペラゴス海洋哺乳類保護区」でも26件が記録されている。ルーマニアの黒海沿岸では、ドナウデルタの海域とゼルノフ藻場という隣接する2つの保護区にかけて67件の油膜が確認され、これらの保護区にはネズミイルカやハンドウイルカが暮らしている。
背景
海洋保護区は、特定の海域で漁業や開発行為を制限し、生態系や生物多様性を守るために各国が指定する区域とされる。クジラやウミガメなど広く移動する種の重要な生息地や繁殖地が選ばれることが多い。スカイトゥルースは衛星画像から海面の油膜を検出する手法で油汚染を追跡してきた団体だ。
スカイトゥルースのジョン・エイモス最高経営責任者は「指定することと、十分に監視・管理することは別だ」と指摘する。油は海洋生物にとって有害で、食物網の底辺にいるオキアミなどの発育を妨げる重金属や化学物質を含む。これらが食物連鎖を通じて大型の海洋生物にまで蓄積していく可能性があるとされる。一時的に高濃度の油にさらされた場合の急性毒性については研究が進んでいるが、低濃度の油に長期間さらされ続けた場合の影響は、調査が難しくまだよく分かっていないという。
日本にとっての意味
「指定することと、十分に監視・管理することは別」というエイモス氏の指摘に当てはまる事例が日本にもある。2018年1月14日、タンカー「SANCHI」号は奄美大島の西方約315キロメートル、日本の排他的経済水域内で沈没した。その後、鹿児島県の奄美大島やトカラ列島の宝島から沖縄本島にかけての海岸に油状の物が漂着した。海上保安庁の分析では、沈没地点付近に浮流する油と島々で採取した漂着油が類似するという結果は出ておらず、事故との関係は断定されていない。環境省が奄美大島で行った水質調査6地点のうち2地点は、奄美群島国立公園の海域公園地区内だった。
自然公園法は海域公園地区内での汚水排出などの行為を許可制で規制するが、鉱物掘採や海底の形状変更に関する区域外の届出義務は、海域公園地区の周辺1キロメートルに限られている。