工事なしで付く窓の日よけ、英国で3度完売 開発した建築デザイナー「暑さへの備えを誰もが買える値段に」
ロンドンを拠点とする建築デザイナー、エメ・ダニエルズ氏が開発した窓の日よけ(オーニング)が、2026年の夏に何度も売り切れた。英国の伝統的な上げ下げ窓に、内側から付け外しできる色鮮やかな外付けの日よけで、価格は89ポンド。ダニエルズ氏は英デザイン誌Dezeenのインタビューで、冷房の代わりになるものだと話し、英国は日よけの力に目を向けるべきだと訴えた。
何が起きたのか
ダニエルズ氏はニューヨーク出身で、冷房のある暮らしに慣れて育った。英国の気温が40度に達した2022年の夏に暑さに苦しみ、2023年に「シェイデッド」を立ち上げた。10年の建築の仕事で、日陰をつくる設計がどれほど効くかを知っていたという。製品は2026年に発売してから3度売り切れた。採算が合えば十分と思って売り出したが、手頃で見た目もよい冷房いらずの製品を求める人がいると分かったと話す。
外付けの日よけは室温を数度下げられる。ところが英国の住宅では珍しく、よく使われるのはブラインドやカーテンで、かえって室内に熱がこもることがある。同氏は、窓の日よけを暑さへの最初の備えと考えていない欧州の国は英国だけだろうと言う。
背景
広まらない理由として、同氏は費用を挙げる。外壁に固定する日よけは、足場を組んで専門の業者に頼む必要があり、取り付けが高くつく。許可の手続きにもお金と時間がかかる。英国には日よけを一律に認める決まりがなく、賃貸の建物や登録建造物、保存地区の建物には制限がかかることが多い。ロンドンのイズリントン区では、集合住宅や保存地区の建物の正面に日よけを付けるには計画許可が要る。一方でウェストミンスター区は、不動産会社グローブナーと組み、ベルグレービアのイートン・スクエアにある登録建造物に、日よけなどの改修を一括で認める仕組みをつくった。
シェイデッドは窓の内側から留めるだけなので、取り付け費はかからず、建物に跡も残らない。同氏は今後、ほかの形の窓に合う製品も出す。「なぜ気候変動に適応できる人とできない人がいるのか。誰もが適応にかかるお金を払えるようにしたい」と話す。
日本にとっての意味
日本の分譲マンションでも、窓は住む人が自由にいじれる場所ではない。国土交通省が示すひな型「マンション標準管理規約」は、窓枠と窓ガラスを各住戸の専有部分に含めず、共用部分として扱う。断熱などのための窓の改良工事は、管理組合が計画修繕として行うと定める。管理組合がすぐに動けないときに限り、住む人は理事長の書面の承認を得て、自分の負担で工事ができる。
外壁に穴を開ける日よけは、なおさら個人の判断では付けにくい。一方で日本には、すだれのように窓の外に掛けるだけの日よけがある。国交省も窓選びの案内で、日射を取り込む窓には夏に庇やすだれを設ける工夫が要るとしている。建物に手を加えず外で日差しを遮るという考え方は、シェイデッドと同じである。