温暖化がカナダ山火事の異常気象、発生確率2倍に 分析
2026年にカナダで発生した大規模な山火事を引き起こした異常な気象条件について、人為的な気候変動がその発生確率を2倍以上に押し上げていたことが、国際研究チームの分析で明らかになった。8月上旬時点で焼失面積は380万ヘクタールを超え、過去30年の年間平均270万ヘクタールを大きく上回っている。
何が起きたのか
気候変動と異常気象の関係を調べる国際的な科学者ネットワーク「ワールド・ウェザー・アトリビューション(World Weather Attribution、WWA)」が、カナダの2026年山火事シーズンについて速報的な分析をまとめた。焼失面積の約94%は、6月下旬から7月下旬までのわずか5週間に集中して発生したという。
研究チームは、気温・風・湿度・乾燥度を組み合わせて「一度火がつくと消火がどれだけ難しいか」を示す指標「デイリー・セバリティ・レーティング(daily severity rating、DSR)」に着目した。観測データと気候モデルを組み合わせて分析した結果、2026年7月のような山火事は、現在の温暖化した気候のもとでは北西準州で2〜6年に一度、オンタリオ州で6〜15年に一度起きる規模になっているという。これに対し、産業革命前の温暖化していない気候では、同規模の火災はおよそ50年に一度しか起きなかったと推定されている。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者セオドア・キーピング氏は、今回の研究はこの変化が気候変動によるものであることを示すさらなる証拠だとしたうえで、「これほど広範囲に火災が広がったことは、備えを進めていても適応だけでは不十分であることを示している」と指摘した。
被害は先住民コミュニティに偏って及んでいる。先住民は人口の5%にすぎないが、山火事による避難者の42%を占めるとされる。オンタリオ州北西部のナメイグーシサガーガン(コリンズ)ファーストネーションでは、公式な早期警報のないままボートで避難する事態も起きた。また、有毒な煙はカナダと米国にまたがって数百キロ先まで拡散し、1億2000万人以上が健康に影響を及ぼしうる大気汚染にさらされたと報告されている。
背景
こうした「アトリビューション研究」と呼ばれる手法は、特定の異常気象1件について「気候変動がなければどれくらいの頻度で起きたか」を統計的に推定するものだ。個別の災害を温暖化と直接結びつける手法として近年広く使われるようになっている。今回のように、モデルを使った推定結果を「◯年に一度」という頻度で示すのが特徴で、その間隔が短くなるほど、その現象が温暖化前より起きやすくなったことを意味する。
カナダは近年、消火能力への投資や関係機関の連携強化を進めてきたが、研究チームは、こうした適応策には物理的な限界が近づきつつあるとしている。赤十字・赤新月社気候センターのループ・シン氏は「数年前ならこの規模の火災はまれな出来事だったはずだ」と述べ、気候変動の結果としてより頻繁に起きるようになっていると指摘している。
日本にとっての意味
日本では大規模な山火事は身近な災害ではないため、この分析は縁遠く感じられるかもしれない。しかし今回の研究が示す本質は、気候変動が「特定の災害の発生確率を具体的に何倍に押し上げているか」を数値で示せるようになってきたという点にある。同様の手法は豪雨や熱波など、日本でもなじみのある災害にも適用されているとされ、温暖化対策の必要性を「実感」として伝える材料になりつつある。
また、先住民など社会的に弱い立場の人々に被害が偏るという構図は、災害対応や避難計画を考えるうえで、日本の地域防災にも通じる論点といえる。