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シエラレオネ大統領、当選ライン引き下げ含む選挙改革を議会に要求

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シエラレオネのジュリアス・マーダ・ビオ大統領が、大統領の当選に必要な得票率を引き下げるなどの選挙制度改革案を可決するよう議会に強く求めている。改革案は与党が推し、野党は反対しており、審議は数週間にわたり行き詰まっている。

何が起きたのか

現地時間の8月9日、ビオ大統領はテレビ演説で、この法案は何年もの協議と対話の産物だとしたうえで、「明確かつ厳粛に訴える。この法案を今、可決してほしい」と議会に呼びかけた。党派を超えて国益のために採決するよう議員に促したという。

改革案の柱は、大統領選挙で当選に必要な得票率を現行の55%から「50%プラス1票」へ引き下げることだ。新しい基準では、候補者は全国得票の過半数に加え、全国の地区の3分の2以上で20%以上の票を得ることが求められる。この条件を満たせなければ決選投票となる。改革案にはこのほか、国会議員選挙に比例代表制を導入すること、政治指導層のポストの30%を女性に割り当てること、大統領が人事を行う際に地域間のバランスや男女平等、少数派の包摂に配慮することを義務づける規定も含まれている。

与党シエラレオネ人民党(SLPP)は、この改革が民主主義を強化し、決選投票にともなう財政負担や政治的緊張、治安リスクを減らせると主張している。一方、野党の全人民会議(APC)は現行の55%基準の維持を求めている。高い当選ラインは幅広い国民的支持を築くよう候補者に促し、当選者の正統性を高めるというのがその理由だ。ビオ大統領の訴えは、この対立が続くなかで出された。2028年の大統領選挙を前に、議会の採決はシエラレオネの政治的合意の行方を占う重要な試金石になるとみられている。

背景

シエラレオネは西アフリカに位置し、1991年から2002年まで内戦が続いたとされる。内戦後は複数政党制による選挙が定着してきたが、政治対立が先鋭化しやすい土壌が残っているとされる。現行制度で大統領当選に55%という高い得票率を求めているのは、特定の地域や民族集団に偏らない広範な支持基盤を候補者に求める狙いがあったとみられる。今回の改革案が当選ラインを50%超に下げようとしているのは、決選投票の回数を減らし、選挙にかかる費用や政治的緊張を抑えたいという与党側の意図が背景にあるようだ。現職の与党が自らに有利なルールへ制度を書き換えようとしているのではないか、という疑念が対立の根底にあるという指摘もある。もう一つの柱である女性30%枠は、アフリカの複数の国で近年広がりつつあるとされる取り組みで、議会や政党の意思決定層における女性の比率を制度的に引き上げる狙いがある。

日本にとっての意味

日本ではこうしたアフリカ一国の国内制度論議が報じられる機会はほとんどないが、この件には二つの点で参照する価値がある。一つは、現職の政権が自らの当選条件を有利に書き換えようとする力学だ。日本でも選挙制度改革のたびに、与党に有利か野党に有利かという議論が起きるが、シエラレオネの事例は「当選ラインそのものを引き下げる」という、より直接的な形で問題が表面化している。もう一つは女性クオータの水準だ。政治指導層の30%を女性に割り当てるという制度案は、日本の政治にはまだ存在しない水準の踏み込んだ仕組みで、日本では議員候補の男女均等を促す法律はあっても罰則を伴う数値割当(クオータ)制度は導入されていないとされる。シエラレオネの議論の行方は、選挙制度の設計と政治的代表性のバランスをどう取るかという、日本の政治にも通じる論点を映す鏡として見ておく価値がある。