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シエラレオネ議会、選挙制度改革法案を可決 女性枠30%も盛り込む

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西アフリカのシエラレオネで、2028年の大統領選挙をにらんだ選挙制度の憲法改正案が議会を通過した。現地時間8月10日、与党シエラレオネ人民党(SLPP)が主導する法案が可決され、野党は議場を退席した。数週間続いた与野党の攻防の末の決着だが、票数は公表されておらず、手続きの正当性を巡る対立はなお尾を引きそうだ。

何が起きたのか

今回の改正案で最も大きく変わるのは、大統領選挙で当選するために必要な得票率だ。これまでは全国の得票の55%を得なければならなかったが、改正案では単純な過半数で当選できるようになる。ただし新たに、候補者は国内の地区(district)の3分の2以上でそれぞれ20%以上の得票を得ることが求められ、これを満たせない場合は決選投票に持ち込まれる。従来の55%要件よりハードルが下がる一方、地区ごとの得票の広がりという新しい条件が加わった形だ。改正案はこのほか、議会選挙に比例代表制を導入し、政治指導職の30%を女性に割り当てる枠も新設する。さらに大統領が人事を行う際には、地域間のバランスや男女平等、少数派の包摂を考慮することも義務付ける。これらの改正内容がいつから効力を持つのかは、現時点では明らかになっていない。

採決について、議会のセゲポ・ソロモン・トーマス(Segepoh Solomon Thomas)議長は「出席議員の単純多数」で可決されたと説明した。これに対し、最大野党の全人民会議(All People’s Congress、APC)は、憲法改正には3分の2の多数が必要だと主張して抵抗したが認められず、議場を去った。任期満了で2028年には再選できない立場のジュリアス・マーダ・ビオ大統領は、前日の現地時間9日、議会に改革案の可決を求めていた。

背景

シエラレオネのように大統領選で決選投票の仕組みがあるのは、一人の候補が過半数に近い幅広い支持を得ていることを担保するためだとされる。フランスの大統領選挙などでもよく知られる制度で、当選ラインを高く設定するほど当選者の正統性は増す一方で、決選投票の実施には追加の費用や時間がかかり、選挙結果を巡る混乱や治安上のリスクが高まりやすいとの指摘がある。与党SLPPは今回の改革について、この決選投票のコストとリスクを減らす狙いだと説明している。これに対し野党APCは、55%という高い基準があるからこそ候補者は特定の地域や支持層だけでなく国全体の支持を求めるようになり、当選者の正統性が高まると主張してきた。議会選挙に導入されるという比例代表制は、日本の衆議院選挙の比例代表部分と同様、得票率に応じて議席を配分する仕組みで、小規模な政党や少数派の意見を議会に反映させやすくなるとされる。政治指導職の30%を女性に割り当てる枠についても、女性の政治参加を制度的に後押しする狙いがあるとみられる。こうした与党主導の選挙制度の書き換えは、次の選挙を有利に進めるための布石だとの見方が野党側から出やすく、可決の手続きに必要な多数がどれだけかという論点が、しばしば与野党の対立の焦点になる。

日本にとっての意味

シエラレオネの選挙制度改革は、貿易や投資で日本と直接結びつく話題ではない。それでも知っておく価値がある論点が二つある。一つは政治指導職の30%女性枠だ。日本でも国会議員や閣僚に占める女性の比率の低さがたびたび論点になり、候補者や議席を一定割合女性に割り当てるクオータ制の是非が議論されてきたが、実現には至っていない。海外で実際にこうした枠が制度化される事例は、この議論に具体的な材料を与える。もう一つは、与党が多数を握る議会で選挙制度そのものを書き換える際に、どれだけの多数決が必要かという手続き論だ。シエラレオネでは野党が「憲法改正には3分の2が必要」と主張し退席するという展開になったが、同様の論点は日本の憲法改正の発議要件(衆参各院の3分の2以上の賛成)を巡る議論とも重なる部分がある。任期満了で自らは出馬できない大統領が任期の終盤に制度改革を急ぐ構図も含め、2028年の次期大統領選に向けてこの改革が今後どう発効し、運用されていくかは、引き続き注視する価値がある。