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NYの画廊、100万個のビーズに来場者が飛び込む参加型展示

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ニューヨーク・アッパーイーストサイドの画廊「Salon 94 Design」で、約100万個のパステルカラーのプラスチックビーズを敷き詰めた展示「Pastel」が開かれている。来場者は靴下姿でビーズの中に入り込み、気に入った粒を集めてブレスレットやネックレスを作れる、体験参加型のアート展示だ。

何が起きたのか

展示を手がけたのはアーティストのCj Hendry。会場となった画廊の1階全体を使い、縦約6メートル、横約9メートル、深さ60センチ余りのプールのようなピットを作り、ユニコーンや木馬、エビ、ドクロ、唇、スニーカーといったモチーフのビーズを敷き詰めた。来場者はビーズの中に手を伸ばしたり、実際に体を沈めたりしながら、1個1ドル(まとめて75個入りの筒で50ドル)でビーズを購入し、その場で糸を通してアクセサリーを作れる。作らずに記念品としてビーズだけ持ち帰ることもできるという。会場の上の階では、Hendryが手がける写実的なドローイングや彫刻も鑑賞できる。展示は現地の8月6日から16日まで、画廊は毎日午前10時から午後7時まで開いている。

発想の元になったのは、ブルックリンにある子ども向け屋内遊戯施設「Space Club」のビーズ細工コーナーだった。トレイに並んだビーズに、子どもだけでなく大人までもが夢中で手を突っ込む姿を見たHendryが、そのトレイを画廊いっぱいの規模に拡大したのが今回の展示だという。Hendry自身、自分の展示にはいつも子どもっぽい遊びの要素があると語っている。

背景

HendryはInstagramで100万人近いフォロワーを抱えるアーティストで、従来の画廊に足を運ぶような客層とは異なる、いわば「オルタナティブ」な支持層を集めてきた人物とされる。一方のSalon 94 Designは、現代アートの世界で評価の高いギャラリーだ。Hendryは今回のコラボレーションについて、自分が作り上げてきた世界と本格的な大手画廊であるSalon 94が衝突するのはばかげたことだとしながらも、その組み合わせだからこそ意味があると説明する。「Salon 94 Designは実験性と観客とのつながりの重要性を理解している」とも述べており、SNSで育った自身のファン層と、伝統的な画廊文化との橋渡しを狙った企画だとうかがえる。ビーズが1個1ドルで売られる点についても、Hendryは「Salon 94がこれまで1ドルでアートを売ったことはないはずだ」と冗談めかしている。本格的な画廊が、誰でも手が届く価格の「作品」を扱うという逆説自体が、この展示の話題性を支えているとみられる。

日本にとっての意味

「Pastel」が示すのは、鑑賞するだけでなく、来場者が実際に手を動かし、成果物を持ち帰れる展示形式だ。日本の美術館や画廊の企画展でも、写真撮影可能なインスタレーションや体験型ワークショップは珍しくなくなってきたが、購入した素材でその場に手を加え、完成品を自分のものにして持ち帰るという仕組みは、収益モデルとしても新しい発想と言える。1個1ドルという低価格設定で幅広い客層を呼び込みつつ、上階では作家本来の作品も展示するという二段構えは、SNS発の若い客層と従来のアート市場をどうつなぐかという、日本の美術関係者にも共通する課題への一つの答え方として参考になりそうだ。今回のような小規模な画廊発の企画は、大規模な美術展のようには日本のメディアで大きく取り上げられにくいが、こうした試みの積み重ねが今後の展覧会のあり方を変えていく可能性がある。