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セウタの越境危機深刻化、地元首長が収容施設新設を要求

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スペイン領セウタで、モロッコからの大量越境をめぐる混乱が続いている。地元首長は移民を一時的に収容する施設の新設を中央政府に求めているが、マドリードは国境管理の徹底を強調するにとどまり、両者の溝は埋まっていない。

何が起きたのか

現地時間7月30日から31日にかけて、モロッコからセウタへ約7万2000人が一気に越境するという、これまでにない規模の流入が起きた。スペイン政府によれば、このうち約7万人はすでにモロッコへ戻ったとされる。しかし数千人がセウタに留まっており、その中には単身で保護者のいない子ども(unaccompanied children)が数百人含まれている。この子どもたちは、法的に簡単には送還できない立場にある。

残留者の人数をめぐっても、地元と中央政府の見解は食い違っている。セウタを率いる国民党(Popular Party)系の首長フアン・ヘスス・ビバス氏は、残留者を8000人から1万1000人程度とみているのに対し、中央政府は約2500人と、大きな開きがある推計を示している。

ビバス氏は「外国人を収容し、そこにとどめておく施設を新たに設けなければならない」と述べ、事態は持続不可能だと訴えた。移民を路上から施設内に移すことで、送還手続きを迅速に進められるとの主張だ。これに対しスペイン外相ホセ・マヌエル・アルバレス氏は、現地時間8月11日にセウタ首長と会談し、「シェンゲン圏の一体性はセウタとメリリャで完全に保たれている」と述べ、国境管理に問題はないとの立場を示した。あわせて、両飛び地の特殊な社会・経済状況を踏まえた欧州からの一層の支援を求めた。

人口約8万4000人のセウタでは、食料・水・住居・衛生面で行政の対応能力に深刻な負荷がかかっているとされ、現地時間8月9日の日曜には、住民数千人が治安悪化への不満を訴える抗議デモを行った。スペイン政府は治安部隊の増員で応じており、地方関係担当相アンヘル・ビクトル・トーレス氏は、治安警備隊(Civil Guard)の人員を4割増やしたことを明らかにした。同氏は、保護者のいない子どもを家族のもとへ戻すことを政府の優先課題としつつ、送還については踏み込んだ言及を避けている。

今回の混乱は外交面にも波及した。イタリアはこの危機を受けてスペインからの入国者に国境検査を導入し、スペイン側も同様の措置で応じるという応酬になっている。

背景

セウタは、アフリカ大陸北端でモロッコと接するスペインの飛び地で、隣接するメリリャとともにEUの外部国境の最前線にあたる。モロッコとの間には高いフェンスが設けられ、越境を試みる移民とスペイン側の警備隊との衝突がたびたび起きてきた地域として知られる。今回のように数万人規模が短期間に一斉に越境する事態は、モロッコ側の国境管理の緩みや外交関係の変化が背景にあるとみられる。

スペイン国内では、移民政策の主導権をめぐり中央政府と地方の対立が続いている。現在の中央政府は左派系だが、セウタを含む一部地域では保守系の国民党や右派政党Voxが力を持ち、移民の受け入れ方針で綱引きが起きている。特に、保護者のいない未成年者をどの地域がどれだけ引き取るかという法的な分担の枠組みは以前から論争の的になっており、地方側が受け入れ拡大に抵抗する姿勢を示していることが、今回の対立にも表れている。

またEUには、加盟国間の国境検査を原則廃止するシェンゲン協定という枠組みがある。ある国の国境管理に不備があるとみなされると、他の加盟国が一時的に検査を復活させることが認められており、今回のイタリアとスペインの間の相互検査導入は、この枠組みの緊張状態を映し出している。

日本にとっての意味

日本はスペインのように陸続きの国境を持たず、大量越境という形の移民危機は起こりにくい。それでも、この事例には日本の議論にとって参考になる点がある。ひとつは、移民の受け入れ負担をめぐって中央政府と地方自治体の間で数字の認識すら一致しないという構図だ。日本でも技能実習生や特定技能外国人の受け入れが自治体単位で進んでおり、生活支援や教育の負担が現場の自治体に集中しがちな点は共通する。もうひとつは、保護者のいない未成年者の扱いという論点だ。人道的な保護義務と、退去を求める世論・治安対策との間でどう線を引くかは、難民認定や在留資格をめぐる日本の制度でも繰り返し問われてきた課題であり、セウタの混乱はその難しさを具体的な数字とともに示す事例といえる。