感染症・健康

妊娠中のコロナワクチン接種、乳児への悪影響見られず 米調査

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アメリカ疾病対策センター(CDC)の研究チームが、妊娠中または妊娠直前にコロナワクチンを接種した女性から生まれた乳児のデータを分析したところ、低出生体重や死亡などの発生率は、パンデミック前の水準を上回らなかったとする論文を発表した。むしろいくつかの指標ではパンデミック前より低い値だった。研究結果は現地時間の7月22日付でJournal of Pediatric Health Care誌に掲載された。論文はオープンアクセスで公開されている

何が起きたのか

研究チームは、2020年12月から2021年6月にかけてコロナワクチンを接種した妊婦を追跡する米国の登録事業「COVID-19 Vaccine Pregnancy Registry(C19VPR)」のデータを使った。対象者には出産後3カ月まで少なくとも3回の聞き取り調査を行い、一部については生後15カ月まで追跡した。

調べたのは、低出生体重(LBW)、在胎不当過小(SGA、妊娠週数に対して体重が小さすぎる状態)、乳児の死亡、そして心停止や心筋症、先天性難聴、心不全、腸重積、心筋炎・心膜炎、けいれん、脳卒中、上室頻拍(脈が突然速くなる不整脈の一種)、低酸素性虚血性脳症など計13項目の健康状態だ。

3カ月時点のデータがある乳児1万9852人のうち、いずれかの症状が確認されたのは0.6%だった。低出生体重の発生率は出生1000人あたり72.6人、在胎不当過小は同71.2人、乳児死亡は同1.5人で、いずれも米国の全国出生統計(National Vital Statistics System)に基づくパンデミック前の推定値より低かった。生後3カ月までに死亡した32人のうち62.5%は早産児で、死因としては先天性の障害や敗血症、低酸素性虚血性脳症などが挙がった。生後15カ月まで追跡できた9156人では、いずれかの症状が確認されたのは1.2%だった。

研究チームは論文で「C19VPRにおける低出生体重、在胎不当過小、死亡、および事前に定めた10項目の乳児の症状の発生率は、パンデミック前の推定値を上回らなかった」とし、「この結果は、母親のコロナワクチン接種後の子どもの健康状態を心配する保護者に対し、小児科医や看護師が説明する際の材料になりうる」と結論づけた。

背景

コロナワクチンが登場した当初、妊婦への接種は臨床試験の対象から外れていたとされ、安全性データの蓄積が課題とされてきた。各国の保健当局は接種後に登録制の追跡調査を実施し、時間をかけてデータを積み上げる形で安全性を確認する方針を取ってきた経緯がある。今回の研究は、その追跡データの一つであるC19VPRを使い、パンデミック前の通常の出生統計と比較することで、ワクチン接種が乳児の健康指標を悪化させていないかを検証したものとみられる。

低出生体重や在胎不当過小といった指標は、母体の感染症や喫煙、栄養状態などさまざまな要因の影響を受けることが知られており、ワクチン接種そのものだけを切り出して評価するのは容易ではない。今回の研究がパンデミック前の全国統計との比較にとどまり、ワクチン非接種の妊婦との直接比較ではない点には留意が必要だ。また乳児死亡率については、登録データの観察期間が生後3カ月まで(一部15カ月)なのに対し、比較対象の全国統計は生後12カ月までの死亡を数えており、論文自体が単純には比較できない数値だと注記している。こうした限界はあるが、少なくとも接種後の乳児で悪化が見られなかったという結果は、これまでの他の安全性研究の傾向とおおむね一致しているという指摘がある。

日本にとっての意味

日本では、妊娠中のワクチン接種の安全性に関する報道は、厚生労働省や日本産科婦人科学会が見解を発表したときに限られる傾向がある。海外のコホート研究が独自に示す数値データは、国内で報じるきっかけがないまま埋もれがちだ。今回のように、低出生体重や在胎不当過小、乳児死亡の発生率が具体的な数値でパンデミック前の水準と比較され、しかも下回っていたという結果は、接種を迷う妊婦や家族が判断材料として参照できる情報のひとつになる。

日本でも妊婦へのコロナワクチン接種は推奨されてきたとされ、今後、新型コロナに限らず妊婦を対象とした新しいワクチンが導入される際には、同様の追跡データが安全性の根拠として使われるとみられる。海外の登録調査がどのような指標をどう比較しているかを知っておくことは、国内で新たな情報が出た際に、その数値が実際に何を意味しているのかを見極める助けになる。