感染症・健康

乳幼児のインフル3割・RSV4分の1で嘔吐や下痢 米研究

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アメリカの研究チームが、生後まもない乳幼児から5歳までの子どもを長期間追跡し、RSV(RSウイルス)やインフルエンザなどの呼吸器ウイルスに感染したときの症状の出方を詳しく調べた。その結果、インフルエンザ感染のおよそ3人に1人、RSV感染の4人に1人以上で、嘔吐や下痢といった消化器症状が出ていたことが分かった。学術誌ペディアトリクス(Pediatrics)に現地の7月27日付で発表された。

何が起きたのか

この研究はシンシナティ小児病院医療センター(Cincinnati Children’s Hospital Medical Center)のチームが主導し、2019年11月から2025年8月にかけて、生まれたばかりの健康な子ども1223人を対象に行われた。毎週鼻の粘膜を採取して検査し、2週間ごとに症状のアンケートを取るという方法で、合わせて1万5898件の急性呼吸器感染を確認した。

症状が出た感染のうち、78.4%は病院にかからず自宅で様子を見る程度で済み、残り21.6%が医療機関での受診・入院に至った。一方で、感染していても症状がまったく出ない「無症状感染」もインフルエンザで7.6%、RSVで10.2%見つかっている。特に生後1年未満の乳児では無症状の割合がさらに高く、インフルエンザで14.5%、RSVで12.5%にのぼった。

無症状の感染が多い一方で、乳児は重症化のリスクも年長の子どもより明らかに高かった。呼吸困難や救急外来受診、入院へのつながりやすさを年長児と比べた「オッズ比」(1を超えるほどリスクの偏りが大きいことを示す統計指標)は、A型インフルエンザで4.73、RSVのA型で2.52、B型で2.22、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)で2.36、新型コロナウイルスで3.99だったという。

そして今回とりわけ注目されたのが消化器症状だ。年齢を問わず、インフルエンザ感染のおよそ3分の1、RSV感染の4分の1以上で、嘔吐や下痢が見られた。発熱や咳といった典型的な呼吸器症状だけでなく、胃腸の不調が呼吸器ウイルス感染のサインになり得るということだ。

背景

乳幼児は免疫の発達が未成熟なため、同じウイルスに感染しても大人や年長の子どもより重症化しやすいことは以前から知られている。ただし、感染してもどんな症状が出るのか、あるいは症状が出ないのかについて、これだけ大規模かつ長期にわたって週単位で追いかけた研究は珍しいとみられる。

今回の論文に添えられた解説記事では、バンダービルト大学医療センター(Vanderbilt University Medical Center)とカンザスシティの小児病院の研究者が、無症状の感染も含めて実態を把握することの重要性を指摘している。多くの子どもが症状のないまま感染を広げている可能性があるとすれば、手洗いだけでなく、空気や物の表面の清掃といった環境面での対策も感染予防に組み込む必要があるという趣旨の指摘だ。またこうしたデータは、ワクチンや、RSV感染を防ぐ抗体薬ニルセビマブ(nirsevimab)といった予防手段の効果を見積もる際の材料にもなるとされている。

日本にとっての意味

日本でも毎年のようにRSVやインフルエンザが流行し、乳幼児の感染者数が報道されるが、そこで伝えられるのはほとんどが患者数の推移といった数値だけで、感染したときにどんな症状が出るかという中身にまで踏み込んだ情報はあまり届かない。今回の研究が示すように、呼吸器ウイルスの感染は発熱や咳だけでなく、嘔吐や下痢という消化器症状として現れることが少なくない。

乳幼児が嘔吐や下痢を起こすと、保護者はまず胃腸炎やノロウイルスなどを疑いがちで、同じ時期に流行しているRSVやインフルエンザとは結び付けにくい。しかし今回の結果は、流行期に子どもが吐いたり下痢をしたりしたときに、呼吸器ウイルス感染の可能性も念頭に置いて受診を判断する材料になり得る。また、乳児は無症状のまま感染していることも多いという点は、兄弟や保育園などを通じた家庭内・集団内での感染拡大を考えるうえでも参考になる知見だ。