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ドレスデン美術館、コレッジョの祭壇画修復完了 特別展の目玉に

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ドイツ・ドレスデンの絵画館「ゲメルデガレリー・アルテ・マイスター」が所蔵する、盛期ルネサンスの画家コレッジョによる祭壇画『聖セバスティアヌスの聖母』が、約4年に及ぶ修復作業を経て公開される。長年にわたる過去の補修や変色したニスの層が取り除かれ、画家が意図した本来の色彩がよみがえった。この作品は、現地で2026年9月19日から2027年1月10日まで開催されるコレッジョの大規模回顧展「Correggio: Movingly Human」の目玉として展示される。

何が起きたのか

『聖セバスティアヌスの聖母』は、コレッジョが1524年頃にイタリア・モデナの信徒会のために板に描いた祭壇画で、同館が所蔵するラファエロの『システィーナの聖母』と並ぶ代表作とされる。だが完成から数十年のうちに表面のひび割れが生じ始め、以後何世紀にもわたり、板を薄く削ったり、ひび割れの上から絵の具を塗り重ねたりする「善意だが逆効果」な補修が繰り返されてきた。その結果、同館の所蔵品の中でもとりわけ状態が脆弱な作品の一つになっていたという。

今回の修復では、移動によるダメージを避けるため、作品は本来の展示室から数百メートル離れた特設の修復スタジオに一時的に移され、通行人が作業の様子を見学できる形で公開修復が進められた。作業は約4年続き、2025年後半に終了した。修復チームは、古いニスや後世の画家による上塗りを取り除く過程で、聖母のマントを覆っていた緑がかった暗い色が、実は鮮やかな青地に深緑の裏地だったことを突き止めた。聖セバスティアヌスや聖ジェミニアヌスの衣も、灰色一色だったものが大理石のような白へと生まれ変わった。さらに、聖セバスティアヌスの体を貫く矢や、そこから滴る血のほか、画面奥の風景の一部に見えていたものが実は聖ロクスの巡礼帽だったことなど、これまで塗り隠されていた図像も明らかになった。

こうした復元の手がかりとなったのが、16世紀後半にモデナの版画家クリストファノ・ベルテッリが同作を写して制作した銅版画である。ドレスデンの版画素描部門「クプファーシュティヒ・カビネット」が所蔵するこの版画のデジタル画像を手元に置きながら作業を進めたことで、後世の修復家が覆い隠した部分を高い精度で復元できたという。修復チームを率いたシュテフィ・ボデヒテル氏は、この版画について「ベルテッリ自身の様式は確かにあるが、彼がまだ何を見ることができていたかを知ることは、私たちにとって非常に重要だった」と説明している。

背景

コレッジョ(本名アントニオ・アレグリ、1489年頃-1534年、出身地の地名が画家名として定着した)は、北イタリアのパルマを拠点に活動し、初期のフレスコ画連作で頭角を現した後、ドレスデンが所蔵する『La Notte(夜)』などの空間表現に優れた作品群で知られるようになった画家である。ラファエロやミケランジェロと並ぶ盛期ルネサンスの巨匠の一人とされながらも、単独の大規模回顧展は主にイタリア国内にとどまってきたとみられる。今回の「Correggio: Movingly Human」展は、イタリア国外で初めて開催される本格的な画業回顧展とみられ、ルーヴル美術館やプラド美術館など各国からの貸与を含む約40点の作品と、周辺作家の作品や当時の顔料・織物の実例など90点を集める大規模な企画となる。

古い油彩画の修復では、時代とともに変色・混濁したニスの除去や、過去の修復家による上塗りの除去が中心的な作業となることが多い。今回のケースでは、そうした過去の補修そのものが作品の保存状態をさらに悪化させていた可能性があり、修復と並行して損傷の経緯を調査すること自体が、美術史的な発見につながった点が特徴といえる。

日本にとっての意味

ドレスデンのゲメルデガレリー・アルテ・マイスターは、フェルメールやラファエロの名品を所蔵する欧州屈指の美術館として知られ、過去に日本国内でも同館の所蔵品を中心とした展覧会が開かれたことがあり、日本の美術ファンにとって縁のある収蔵先である。今回のコレッジョ展が日本に巡回する予定があるかどうかは資料からは分からないが、修復の過程で16世紀の版画を手がかりに失われた図像を復元する手法は、日本国内の文化財修復でも参考にされる考え方に通じる。日本国内でも寺社の仏像や絵画の修復にあたり、古い記録や模写を参照して制作当初の姿を推定する手法が用いられることがあり、今回のドレスデンの事例は、洋の東西を問わず文化財修復に共通する課題と工夫を示す例として読める。また、盛期ルネサンス期の画家の大規模回顧展がイタリア国外で初めて実現するというニュース自体も、西洋美術史の空白を埋める動きとして、美術愛好家にとって注目に値する。