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1961年に消えたピカソ、60年以上を経てグッゲンハイムが返還提訴

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ニューヨークのグッゲンハイム美術館が、1961年に貸出先の大学から盗まれたパブロ・ピカソの油彩画をめぐり、現地時間今週、所有権を取り戻すための訴訟を起こした。60年以上行方不明だった絵の所在が最近になって判明したことが、提訴の直接のきっかけとみられる。

何が起きたのか

問題の作品は、ピカソが1918年に描いた「Femme dans un fauteuil(肘掛け椅子の女)」という縦34センチ、横27センチほどの小さな油彩画。もともとグッゲンハイム財団(Solomon R. Guggenheim Foundation)が所蔵していたもので、秋学期にピッツバーグ大学で開かれた展覧会に貸し出されていた。展示が終わり、1961年2月中に美術館へ返却される予定だったが、現地時間1961年2月6日朝、大学の学生会館で絵の紛失が発覚する。発見したのは大学院生で寮の管理補助を務めていた人物だった。

大学側はただちにピッツバーグ市警に盗難を通報し、FBIも捜査に加わった。当時は新聞各紙が事件を報じ、北米各地の機関にも通知が出され、情報提供者への懸賞金も用意されたが、手がかりはつかめないまま捜査は行き詰まった。以来60年以上、この絵は美術界から姿を消したままだった。

グッゲンハイム側は絵が最近になって見つかったとしており、同館は今週、絵を取り戻すための訴訟に踏み切った。

背景

盗難美術品をめぐる法廷闘争は、欧米の美術館にとって珍しいものではない。作品は所有者の手を離れたあと、オークションや個人間売買、相続などを経て転々とすることが多く、盗品と知らずに購入した「善意の第三者」が後になって権利関係を争われるケースもしばしば起きる。美術品の来歴、いわゆるプロブナンス(provenance、所有者や展示履歴の記録)が完全に確認できないまま流通してしまうことが、この種のトラブルの温床になっているとの指摘がある。

米国では、盗まれた美術品について所有権を主張する側が長期間経過後でも訴訟を起こせる仕組みがあるとされ、ナチス・ドイツによる略奪美術品の返還訴訟など、数十年を経て所有権が争われる例は他にも見られる。今回のケースも、絵の所在が判明した時点で美術館側が改めて法的手段に訴えたという点で、こうした流れに連なるものと見られる。ピカソは世界的にも盗難被害の多い画家の一人として知られており、その作品は真贋や来歴の管理がとりわけ厳しく求められる存在でもある。

日本にとっての意味

60年以上前に消えた名画が再び姿を現し、所有権が法廷で争われるという話は、日本のニュースではあまり取り上げられない題材だが、日本の美術館や個人収集家にとっても無縁ではない論点を含んでいる。日本の美術館も海外の作品を借りて展覧会を開くことが多く、貸し借りの過程で作品の管理責任がどちらにあるのか、来歴の確認をどこまで行うべきかは、国内の美術関係者にとっても実務上の関心事だ。また、近年は日本でも海外オークションを通じて絵画や骨董品を購入する個人や企業が増えており、購入した作品が過去に盗難や不正な流出の経緯を持っていた場合、後になって所有権を争われるリスクが理論上は存在する。今回のグッゲンハイムの提訴は、美術品という「動く資産」がいかに長期にわたって所有権の不確実性を抱えたまま流通し得るかを示す事例として、参考になる。