アイスランド、EU加盟交渉再開を問う国民投票で期日前投票続く
アイスランドで、EU(欧州連合)への加盟交渉を再開すべきかどうかを問う国民投票が進んでいる。公共放送RUVによると、現地時間の7月27日に始まった期日前投票では、現地時間13日夜の時点ですでに1万3187人が投票を済ませた。これは登録有権者27万2690人のおよそ4.8%にあたる。
何が起きたのか
今回の国民投票は、EUに加盟するかどうかそのものを問うものではなく、中断しているEU加盟交渉を再開するかどうかを問うものである。期日前投票の内訳を見ると、首都圏での投票が8524人と、全体のおよそ65%を占めている。首都圏は登録有権者が13万5317人(レイキャビク9万5691人、南西選挙区3万9626人)で、全国の有権者のおよそ半数にあたる。首都圏だけで見ると、投票を済ませた人の割合はおよそ6.3%にのぼる。
アイスランド国家選挙委員会のアストリドゥル・ヨハンネスドッティル事務局長は「かなり高い割合だという感触を持っている」と述べた一方、今回の期日前投票の期間は通常の29日間より長く設定されている上、比較対象になるような近年の国民投票もないため、過去の数字と単純に比べるのは難しいとも説明した。
投票できるのは、18歳以上でアイスランドに法的な住所を持つ国民に限られる。国外に住むアイスランド国民も、住所をアイスランドから移してから16年間は投票権を保持する。外国籍の住民には投票権がない。
背景
アイスランドは人口が少なく、経済において水産業が大きな比重を占める国として知られる。EUに加盟すれば、漁獲枠の設定や漁業資源の管理をEU全体の共通の仕組みに委ねることになりかねない、という懸念が国内で根強いとされる。アイスランドは過去にEU加盟を申請した経緯があるものの、その後交渉は中断したままだったとみられ、今回の国民投票はその交渉を再び動かすかどうかを問う位置づけにある。
アイスランドはEUには加盟していないが、欧州経済領域(EEA)を通じて域内市場への参加は続いているとされ、EUと一定の経済的なつながりを保ってきた。それでも漁業をめぐる主権を手放すことへの警戒感が、加盟そのものへの慎重論を支えてきたという指摘がある。今回の国民投票で交渉再開が支持されれば、こうした水産資源の管理をめぐる議論が改めて前面に出てくることになりそうだ。
日本にとっての意味
アイスランドの動向は、日本の食卓とも無関係ではない。日本国内で流通するシシャモや白身魚などの水産物には、アイスランドを含む北欧・北大西洋の国々からの輸入品が含まれるとされ、漁獲枠や資源管理のルールが誰の手で決まるかは、遠い国の政治問題にとどまらない側面がある。EUに漁業管理の権限がより強く及ぶようになれば、アイスランドの漁業政策や輸出のあり方にも影響が及ぶ可能性がある。
より広く見れば、この国民投票が問うているのは、水産資源という自国の重要な資産の管理を、国際的な枠組みにどこまで委ねるかという主権上のジレンマである。日本も、国際捕鯨委員会(IWC)をめぐる議論など、資源管理の国際的な枠組みへの参加と自国の裁量のバランスをめぐって同様の論点に直面してきたとされる。人口の少ない漁業国が下す判断として、アイスランドの選択は日本の読者にとっても参照点になり得る。