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長期COVIDの脳症状、脳内ドーパミンの減少と関連か カナダ研究

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長期COVID(コロナ感染後に長引く後遺症)の患者に見られる「ブレインフォグ」と呼ばれる思考のもやつきや倦怠感、意欲の低下について、その背景に脳内のドーパミン神経系の変化がある可能性を示す研究結果が発表された。カナダ・トロントの研究チームが、脳のPET画像検査を使って明らかにした。

何が起きたのか

トロント大学とブレインヘルスイメージングセンターの研究チームは、長期COVIDで神経精神症状が続く成人24人と、健康な成人24人を対象に、脳のPET(陽電子放射断層撮影)検査を実施した。調べたのは「VMAT2」と呼ばれる分子で、ドーパミンを放出する神経の末端がどれだけ健全に残っているかを示す指標として使われる。

その結果、長期COVID患者の脳では、健康な人と比べてVMAT2の値が低く、脳の「線条体」と呼ばれる部位でその差が16〜20%に達していた。線条体は、意欲や達成感に関わる「報酬」の処理、体の動きの制御、そして記憶や思考といった認知機能に関わる部位とされる。特に差が大きかったのは、運動に関わる「背側被殻」と、記憶に関わる「背側尾状核」という領域で、意欲や報酬に関わる「腹側線条体」での差は比較的小さかった。

研究を主導したジェフリー・メイヤー医師は、所属するトロントの依存症・精神保健センター(CAMH)の発表資料で「今回の結果は、長期COVIDにドーパミンを放出する神経の喪失が伴っていることを示す説得力ある証拠だ」と述べている。こうした神経の損傷は、意欲の低下や動作の緩慢さを引き起こすことがよく知られているといい、メイヤー氏は「長期COVIDでも同様の過程が起きている可能性がある」と説明した。

背景

ドーパミン(医学分野では「ドパミン」と表記される)は脳内で情報を伝える神経伝達物質の一つで、意欲や集中力、体の動きの滑らかさに深く関わっている。パーキンソン病など、ドーパミンを作る神経が減っていく病気で意欲低下や動作の緩慢さが起きることはよく知られており、今回の研究はこれと似た仕組みが長期COVIDの一部の患者にも起きているのではないか、という仮説を後押しする内容といえる。

長期COVIDでは倦怠感や集中力の低下、記憶力の問題を訴える人が世界的に多く報告されてきたが、これまでその原因を脳の中の具体的な変化として捉えた研究は乏しかった。今回の論文に寄せた解説で、フランス・エクスマルセイユ大学のエリック・ゲジ氏らは、この研究を、症状を記述する段階から脳のメカニズムに基づいて患者を分類する段階へと議論を進めるものだと評価している。ただし、これはあくまで関連性を示したものであり、ドーパミンの減少が原因だと証明されたわけではない点には注意が必要だ。対象者はわずか24人ずつと少なく、神経精神症状が目立つ患者に限られている。ゲジ氏らは、こうした脳の変化は必ずしも永続的とは限らないとし、臨床的な意味を見極めるにはさらに長期の追跡研究が必要だと指摘している。

この結果を踏まえ、メイヤー氏は、ドーパミン神経の働きを補う薬、たとえばドーパミンの材料となる物質や、ドーパミンの分解を防ぐ薬を長期COVID治療に転用できる可能性があるとの見方を示している。

日本にとっての意味

日本でも新型コロナ感染後に倦怠感や集中力の低下が続く後遺症の相談は少なくなく、原因がはっきりしないまま「気のせい」「疲れ」と片付けられてしまうことも指摘されてきた。今回の研究は、こうした症状が脳の中の測定可能な変化と結びつく可能性を示した点で意味がある。まだ治療法の確立には至っていないが、原因の一端が具体的に見えてきたことは、症状に悩む患者が診断や治療の選択肢を医療機関で相談する際の材料になりうる。今後、日本国内でも同様の脳画像研究や、既存のドーパミン関連薬を長期COVID治療に応用する臨床試験が進む可能性があり、その動向は後遺症に悩む読者にとって注目に値する。