長期COVIDの神経症状、女性は男性より重い 米研究
米ノースウェスタン大学の研究チームが、新型コロナウイルス感染後に長引く神経症状、いわゆる長期COVID(long COVID)について、女性は男性よりも症状が重く、種類も多いとする研究結果を発表した。学術誌「Annals of Clinical and Translational Neurology」に掲載された論文によるもので、しびれ、めまい、頭痛、痛みなどの症状が女性に目立って多く報告されたという。
何が起きたのか
研究チームは、2020年5月から2025年8月にかけて長期COVID専門の外来を受診した患者を分析した。入院歴のある患者261人と、入院しなかった患者2068人の2グループに分け、症状発症から平均16カ月が経過した時点での状態を調べている。
その結果、両グループとも女性は男性より4つ以上の神経症状を訴える割合が高かった。入院歴のあるグループでは女性79.6%、男性64.9%が4つ以上の神経症状を報告し、入院しなかったグループでは女性76.1%、男性64.6%だった。具体的には、両グループの女性がしびれ・じんじん感、めまい、頭痛、痛みを男性より多く訴えた。さらに入院しなかった女性患者では、頭がぼんやりする「ブレインフォグ(brain fog)」、筋肉痛、味覚・嗅覚の異常も男性より多く報告された。
疲労や息切れ、胸の痛み、自律神経の乱れ(dysautonomia)についても女性の方が多く訴えており、疲労の重さを測るアンケートでも女性のスコアは男性より悪かった。入院しなかった女性患者は、注意力を測る認知テストの成績も男性より低かった。研究チームは論文で「女性は長期COVIDの神経症状の負担がより重く、主観的な生活の質も、客観的な認知機能も悪化している」と記し、「これらの結果は、医療における性差バイアスの影響を受けやすい女性患者に対して、迅速な診断と的を絞った介入がいかに重要かを示している」と指摘した。
背景
長期COVIDとは、新型コロナ感染後に数カ月から数年にわたって症状が続く状態を指し、医学的には「PASC(post-acute sequelae of SARS-CoV-2、コロナ感染後遺症)」とも呼ばれる。疲労、息切れ、頭痛、集中力の低下など多岐にわたる症状が報告されており、世界保健機関(WHO)をはじめ各国の保健当局が実態把握を続けている分野だ。
長期COVIDが女性に多く見られること自体は以前から知られていたが、今回の研究が新しいのは、神経症状に絞って男女差を詳しく検証した点にある。自己免疫疾患など他の慢性疾患でも女性の有病率が高い傾向が知られており、ホルモンや免疫系の違いが関係している可能性が指摘されているが、長期COVIDにおける性差の仕組みはまだ十分に解明されていない。
日本にとっての意味
日本国内でも、コロナ罹患後症状(後遺症)の外来を設ける医療機関が増えたとされ、疲労やブレインフォグ、しびれ、めまいといった訴えで受診する患者は珍しくない。今回の研究が示すように、こうした神経症状は女性の患者でより頻繁かつ重く現れる可能性があり、診療現場で「気のせい」「ストレスのせい」として扱われがちな女性の訴えを、症状として正面から評価する重要性を裏付ける材料になり得る。
女性の症状が医療現場で過小評価されやすいという問題は、長期COVIDに限らず、月経随伴症状や慢性疲労症候群など他の分野でも以前から指摘されてきた。今回のような大規模なデータに基づく研究結果は、日本の医療機関が後遺症外来での問診や検査の設計を見直す際の参考になる可能性がある。特に、しびれや頭痛、めまいといった一般的な症状であっても、長期化している場合は性差を踏まえた丁寧な評価が必要だという点は、患者自身が受診の際に医師へ伝える上でも役立つ視点だろう。