気候・災害

猛暑で原発停止、フランスなど欧州で相次ぐ 弱点は原子力だけではない

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2026年の夏、欧州を襲った熱波でフランスの原子力発電所が相次いで停止し、電力供給に影響が出た。英国の気候専門メディアCarbon Briefは、熱波が原子力・ガス火力・風力・太陽光それぞれの発電にどう影響するかを検証し、「変動する再生可能エネルギーだけが酷暑に弱い」という一部の主張は不正確だと指摘した。

何が起きたのか

2026年7月の熱波で、フランスにある57基の原子炉のうち3基が停止し、さらに7基で出力が落とされた。この影響で同国の原子力発電量は約9%落ち込んだ。現地時間8月3日の月曜日には、フランスの原子力発電設備の12%が熱波を理由に稼働を停止しており、翌4日には7%まで下がる見通しだったという。

同じ時期、ドナウ川沿いのルーマニアとハンガリーでも、川の水位低下によって原発が停止や出力低下に追い込まれた。データ会社Montelによれば、現地時間8月3日時点で南東欧の原子力発電設備のうち約244万キロワット、比率にして約40%が干ばつの影響で停止していた。スイスでも川の水温上昇を理由に原発1基が停止した。フランスでは6月の2週間の熱波の間、電力需要が約20%増加したという。ガス火力発電所は効率が落ち、風力発電も風速の低下で出力が下がったと報じられている。

背景

原子力発電は核分裂で発生する熱で蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電する。使い終えた蒸気を冷やして水に戻すため、多くの原発は川や海の水を使って冷却している。熱波で取水温度が上がると冷却効率が落ち、干ばつで水量が減ればさらに冷却能力が落ちる。世界にある440基の原子炉のうち、川の水を一度だけ使ってそのまま戻す「once-through」方式の冷却を採用しているのは約60基で、世界の原子炉全体の14%を占める。このうち8基がフランスにある。

カナダ・マクマスター大学の研究者マイケル・タドラス氏はCarbon Briefに対し、熱波の影響は「実在するが、多くの見出しが示唆するよりはるかに小さい」と述べている。同氏によれば、冷却水の温度が15度上昇するという極端な条件でも、大型原子炉の出力低下は約6%にとどまるという。むしろ問題になるのは技術面より法規制の面だとし、原発は取水した川の水より数度温かい水を川に戻すため、水生生物保護のために排水温度の上限が法律で定められていると説明した。実際、川の水温上昇による停止は「生態系保護の規制を守るための自動的な対応であり、技術的な故障ではない」と、業界団体World Nuclear Associationの広報担当者ヘンリー・プレストン氏も述べている。熱波が特に厳しい場合は、電力供給の必要性を踏まえてこうした規制が一時的に緩和されることもあるという。

さらに、水温上昇と水位低下では影響の続き方が異なる点も重要だ。水温は熱波が去れば比較的早く元に戻るが、干ばつによる水位低下は雨が降らない限り長期化する。現在のドナウ川流域の干ばつも、数日から数週間続くとみられ、東欧の一部の国はエネルギー面での非常事態に近い状況に置かれていると報じられている。もっとも、タドラス氏らの研究によれば、2003年から2022年の間、熱波が年間の原子力発電量に与えた影響は平均で0.6%にとどまり、1%を超えて減少したのは2003年のフランス(1.3%減)のみだった。気温が1度上がるごとに原発の効率が0.6〜1%落ちるとする試算もある。

日本にとっての意味

日本の原発は川ではなく海水で冷却する仕組みが中心で、ドナウ川のような河川の水位低下による停止という構図はそのままでは当てはまらないとみられる。ただし、取水温度が上がると熱効率が落ちるという物理的な仕組み自体は、原子力に限らず蒸気タービンで発電する火力発電全般に共通する。日本の夏の電力需要のかなりの部分を担うLNG火力や石炭火力も、原理的には同じ制約を抱えていると考えられる。

また、フランスの熱波時に電力需要が約2割増えたという事実は、日本で毎年のように起きる猛暑時の電力需給ひっ迫と重なる部分がある。日本では「再生可能エネルギーは天候任せで酷暑に弱い」という主張が原発再稼働論議の中でしばしば持ち出されるが、今回の検証が示すのは、原子力やガス火力にも熱波固有の弱点があるという事実だ。どの電源方式にも気候変動による固有のリスクがあり、単純に電源の種類だけで「強い・弱い」を語れないという視点は、日本のエネルギー政策を考えるうえでも参考になる。