気候・災害

欧州沿岸の海が記録的高温、研究者集団が人為的温暖化と特定

ヨーロッパの記事一覧

2026年7月、欧州沿岸の海は過去に例のない高温を記録した。研究者集団「世界気象アトリビューション(World Weather Attribution、WWA)」の分析によれば、この異常な暖かさは主に人間活動による気候変動が引き起こしたもので、海の生態系が耐えられる限界を超えたという。

何が起きたのか

WWAは、ケルト海、ビスケー湾とイベリア半島沿岸、地中海西部、地中海東部の4つの海域を対象に、7月のうち最も暑かった14日間の海面水温を調べた。通常、欧州近海の水温は8〜9月に最も高くなるため、あえて7月を選ぶことで、温暖化が季節の早い時期の海の高温にどう影響しているかを見極めようとした。

分析の結果、4海域の平均水温は例年の7月の基準よりセ氏2.4度(華氏4.3度)高かった。個別に見ると、ケルト海は例年より1.9度、地中海東部は2度それぞれ高かった。WWAは、こうした水温は産業革命前の気候(現在よりセ氏1.4度低かった)では「事実上あり得なかった」が、現在の気候では「比較的よくあること」になっていると指摘する。

さらに、今回の高温がどの程度気候変動によるものかを算出したところ、地中海西部と東部では気候変動が直接セ氏約2度分の熱を加えており、地中海東部に限れば異常高温の2度分すべてが気候変動によるものだった。ケルト海とビスケー湾・イベリア半島沿岸でも、気候変動が1.1〜1.4度分を直接押し上げていた。

研究の筆頭著者でアイルランドのメイヌース大学に所属するクレア・バーギン氏は記者会見で、「人為的な温暖化がなければ、ケルト海域で海洋熱波が起きる面積は全体の30%程度にとどまったはずだが、現在の気候では80%に達している」と述べた。地中海西部では40%から80%へ、地中海東部では9%から70%へと、海洋熱波が発生する範囲が大きく広がったという。

背景

海洋熱波は、海面水温が平年より著しく高い状態が一定期間続く現象で、近年、世界各地の海で頻度と強度が増しているとみられる。研究に参加した米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の海洋生態学者ジョン・ブルーノ氏は、生物が生理的に耐えられる限界を超えること自体が最大の影響だと説明する。魚や貝、サンゴなど海の生物の多くは変温動物で、体温が周囲の海水温に左右されるため、水温が上がると代謝が速まり、餌不足や個体の衰弱を招きやすい。今回観測された水温上昇は、サンゴや海藻など生態系の土台となる生物の大量死を引き起こしうる水準だとされ、食物網全体への連鎖的な影響も懸念されている。

世界の平均気温はすでに産業革命前より上昇しており、海もその熱の大部分を吸収してきたとされる。バーギン氏は、化石燃料からの急速な転換が進まなければ、今回観測されたような水温は今世紀末までにさらに1.3〜1.9度上昇すると見込まれると述べている。

日本にとっての意味

日本近海も同じ方向に動いており、しかも世界の平均より速い。気象庁によれば、日本近海の海域平均海面水温は2025年までの統計で100年あたりセ氏1.36度上昇した。世界全体の平均は100年あたり0.63度で、日本近海はその2倍を超える。海域による差も大きく、水産庁の令和6年度水産白書は日本海中部で100年あたり2.01度、三陸沖で1.20度という値を挙げている。三陸沖では2023年以降、平年より約6度高い状態が現れた。海洋熱波の発生頻度そのものも、1980年代以降ほぼ倍増したとされる。

ただし日本の側にあるのは「何度上がったか」という観測の積み重ねであって、「そのうち何度分が人間活動によるものか」を切り分けた数字ではない。今回の欧州の研究の価値は、稀にしか起きなかった規模の高温が現在の気候では珍しくない現象になったことを、産業革命前の気候との比較で定量的に示した点にある。同じ切り分けを日本の海域ごとに行えば、漁業資源の管理や養殖をどの時間軸で組み直すべきかを、推測ではなく数字で議論できるようになる。陸で暮らす私たちが実感しにくい海の変化を、こうした国際的な研究の積み重ねが可視化している。