気候・災害

石炭新規鉱山の開設、10年で最低に 東アジア需要頭打ち

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エネルギー分野の調査団体グローバル・エナジー・モニター(GEM)が発表した報告書によると、2025年に稼働を始めた新規の石炭鉱山の容量は、少なくとも過去10年で最も少なかった。前年の2024年からも4割近く減少し、2年連続で過去10年の最低水準となった。中国とオーストラリアでの落ち込みが特に大きく、世界全体の減少を主導した形だ。

何が起きたのか

GEMの報告書によれば、中国では新規鉱山の容量が前年比44%減った。太陽光や風力発電が石炭火力を置き換え始めたことに加え、中国の国家能源局(エネルギー当局)が新規鉱山の開設を抑える規制を導入したことが背景にあるという。ただし2026年前半には中国の石炭火力発電量が再び増加に転じたことも報告されており、脱石炭が一直線に進んでいるわけではない。

より急激だったのはオーストラリアで、新規鉱山容量は前年比96%減という大幅な落ち込みを記録した。報告書は、日本、韓国、台湾といった発電用石炭の輸入国で需要が縮小していることが主因だとしている。オーストラリアのニューサウスウェールズ州は最近、未開発の緑地(グリーンフィールド)での新規石炭鉱山の開発を禁止しており、GEMはこの流れが今後も続くとみている。

一方で、世界全体で「計画段階」にある石炭鉱山の容量はむしろ11%増加した。その大半はインド東部のジャールカンド州とオディシャ州における新規プロジェクトによるものだという。GEMは、これらの計画がすべて実現すれば、正式な石炭撤退計画を持たないインドが今後何年にもわたって石炭拡大路線に縛られ、気温上昇を産業革命前比1.5度に抑える気候目標に沿った脱化石燃料はさらに遠のくと警告している。

背景

石炭火力は今も世界の主要な発電源の一つとされるが、国際エネルギー機関(IEA)は再生可能エネルギーなどの拡大により、世界の石炭需要は2030年ごろまで横ばいで推移すると見込んでいる。今回の報告書が示す「新規鉱山開設の減速」は、この需要頭打ちの動きが供給側にも波及し始めた兆候といえる。

ただし需要が伸び悩む地域と、なお拡大を計画する地域とに世界は分かれつつある。中国は太陽光・風力の急拡大で石炭の相対的な地位が下がりつつあるが、脱石炭は一様には進んでいない。対照的にインドは、経済成長に伴う電力需要の増加や熱波対応を理由に石炭増産を掲げ、20を超える新規鉱山の開設を計画している。インドはエネルギー安全保障の観点から、輸入ガスではなく国産石炭を原料にした化学品生産という戦略も追求しており、中国も同じ戦略を採っているが、GEMはインド産石炭は灰分が多く、化学品原料としての活用は難しいとみている。

国際的な気候交渉の枠組みでも、石炭を巡る溝は続いている。2021年のCOP26で各国は石炭火力の「段階的削減」で合意したが、これは中国やインドの主張で「段階的廃止」から表現が弱められた経緯がある。2023年のCOP28では化石燃料全体からの「移行」で合意したものの、南アフリカやベトナム、インドネシアと先進国の間で結ばれたような、石炭から再生可能エネルギーへの移行を支援する国際的な資金協力の枠組み(JETP)は、インドとの間では予備協議が行われたものの、2024年11月に断念された。

日本にとっての意味

今回の報告書が興味深いのは、業界データとしてはやや専門的な「新規鉱山の開設ペース」という統計を扱っている点だ。日本は発電用石炭の多くをオーストラリアからの輸入に頼っており、報告書はまさに日本、韓国、台湾といった輸入国の需要縮小がオーストラリアでの新規鉱山開設急減の主因だと名指ししている。つまり日本国内の石炭火力からの転換の動きが、輸出元であるオーストラリアの投資判断にも直接影響を及ぼしているということだ。

報告書を報じたClimate Home Newsの記事は日本について、東京電力福島第一原発事故後の原子力発電の再稼働・拡大を進めることで石炭火力を置き換えようとしていると伝えている。GEMは、こうした輸入国側の需要縮小を背景に、オーストラリアでの新規鉱山開設の減少が今後も続くとみている。