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欧州疾病予防管理センター、呼吸器ウイルス監視の新指針を発表

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欧州疾病予防管理センター(ECDC)は現地時間7月20日、インフルエンザや新型コロナウイルス、RSV(呼吸器合胞体ウイルス)といった呼吸器ウイルスの流行状況を監視するための新しい技術指針を発表した。EU加盟国とアイスランド・ノルウェー・リヒテンシュタインを加えたEU/EEA各国が、ウイルスの流行の変化をより早く察知し、対策につなげられるようにすることが狙いだ。

何が起きたのか

ECDCが公表したのは「欧州における統合的呼吸器ウイルス監視のための指針」と題する文書で、インフルエンザウイルス、新型コロナの原因ウイルスであるSARS-CoV-2、RSVの3種類を対象とした通常時のサーベイランス(継続的な監視)体制について、実務的な目標や、それを達成するために必要な疫学的・ウイルス学的な仕組みを示している。各国が集めるデータを互いに比較できる形にそろえることで、一国単位でもEU全体でも、流行の兆候をつかんで予防・対策の判断に生かせるようにするという。

この指針の特徴は、一度に全体を固めて公表するのではなく、モジュール(部品)ごとに区切って随時発表し、更新していく形式を採った点にある。ECDCによれば、こうすることで指針を早く公表でき、状況の変化に応じた改定もしやすくなるという。今後1年ほどをかけて追加のモジュールが順次まとまる予定で、下水中のウイルス検出や電子カルテデータの活用といった、比較的新しい監視手法を扱う内容も将来加わる可能性があるとしている。

背景

ECDCはEUの公衆衛生機関で、加盟国の感染症対策を技術面から支える役割を担う。新型コロナの世界的な流行では、各国がそれぞれ異なる基準で感染者数や検査データを集計していたため、国境を越えた比較や早期の異常検知が難しいという課題が繰り返し指摘されてきた。今回の指針は、こうした反省を踏まえ、インフルエンザ・新型コロナ・RSVという主要な呼吸器ウイルスについて、あらかじめ各国共通の枠組みを整えておこうとする取り組みだと位置づけられる。

各国には独自の医療制度や検査体制があるため、ECDCの指針は一律のやり方を押し付けるのではなく、共通の「物差し」を示しつつ各国が自国の事情に合わせて調整できるようにする設計になっているという。これにより、平時から流行の兆しをつかみやすくし、次の流行の波が来たときに各国・EU全体で迅速に判断できる体制を築くことを目指しているとみられる。

日本にとっての意味

日本では季節性インフルエンザやRSVなどの流行状況を、全国の指定医療機関からの報告に基づく「定点報告」という仕組みで把握している。指定された医療機関だけが患者数を報告し、そこから全体の流行規模を推計する方式で、迅速に大まかな傾向をつかめる利点がある一方、報告対象外の医療機関の患者数は含まれず、地域や年齢層による偏りが生じうるという指摘もある。

今回ECDCが打ち出したのは、こうした各国の監視体制そのものを、国境を越えて比較可能な形にそろえようとする発想だ。日本の定点報告制度がどれだけ国際的な監視基準と整合しているか、また将来的に下水サーベイランスや電子カルテの活用といった手法をどう取り入れていくかを考えるうえで、欧州の動きは一つの参照点になる。加えて、欧州でインフルエンザや新型コロナの流行を早期に検知する体制が強化されれば、渡航者を通じた感染症の国内への流入状況を把握するうえでも、日本の検疫・サーベイランス機関にとって有用な情報源が増えることになる。