コロラド川2大貯水池、相次ぎ観測史上最低水位に
米国第2の貯水池、パウエル湖の水位が観測史上最低を記録した。現地時間の8月15日(土曜日)のことで、その約1週間前には同じコロラド川水系にあるミード湖も史上最低水位を更新したばかりだった。二つの主要貯水池が相次いで最低記録を出したことで、コロラド川流域が抱える水不足の深刻さが改めて浮き彫りになっている。
何が起きたのか
米国内務省開拓局(USBR)のデータによると、パウエル湖の水位は現地時間8月15日に海抜3519.91フィート(約1072.9メートル)まで下がった。これは2023年4月に記録した従来の最低水位をわずかに下回る水準で、年初と比べると20フィート(約6.1メートル)以上も低下しているという。
貯水池の水位はいま、水力発電のタービンが停止してしまう水準まで残り約30フィート(約9.1メートル)に迫っている。連邦当局は今年4月の時点で、年内にこの危険水準へ到達するのを避けるには「大がかりな介入」が必要だと警告していた。
パウエル湖とミード湖を合わせた貯水量は、この約70年間で最も少ない水準にある。専門家グループがまとめた最近の論文によれば、これほど貯水量が少なかったのは1957年5月、つまりパウエル湖をせき止めるグレンキャニオンダムがまだ建設中だった時期以来だという。パウエル湖への貯水が始まったのは1963年のことだった。
水位低下は観光業にも影響している。パウエル湖では船着き場(ボートランプ)の閉鎖や移設が相次ぎ、新しい船着き場の整備や、マリーナ自体を水深のある場所へ一時的に移す対応が取られている。
背景
コロラド川は、カリフォルニア、アリゾナ、ネバダ、ニューメキシコ、ユタ、ワイオミング、コロラドの米国7州にまたがり、4000万人以上の生活用水や電力、そして野生生物の生息環境を支える基幹的な水資源だ。パウエル湖とミード湖はこの川に作られた二つの巨大な人造湖で、農業や都市への給水を調整するダムの貯水池として機能している。
今回の記録的な低水位の背景には、長年にわたる水の過剰利用に加え、記録的に雨雪の少ない冬と気温上昇が重なったことがあるとされる。米国南西部は近年、気候変動の影響とみられる長期的な乾燥傾向(メガドラウト)に見舞われており、雪解け水に依存するコロラド川の水量そのものが細り続けているとの指摘がある。
水を分け合う7州と連邦政府は、先細る資源をどう長期的に管理するかで合意にたどり着けずにいる。USBRは今年7月、アリゾナ、カリフォルニア、ネバダ3州への大幅な水の割り当て削減を含む10年間の管理計画案を提示したが、各州の利害が絡み調整は難航しているとみられる。
日本にとっての意味
数千万人規模の生活と経済に直結する、気候変動による水資源逼迫の具体例として知っておく価値がある。日本は降水量が多く水資源に恵まれた国とされてきたが、近年は台風や豪雨の激甚化と並行して、渇水や取水制限のニュースも増えている。米国南西部のような「川の水が構造的に足りなくなる」事態は、ダムや河川管理の仕組みが違っても、将来的な参考事例になりうる。
また、コロラド川流域はアリゾナ州やカリフォルニア州の農業地帯を支えており、ここで生産される野菜や果物、綿花などは輸出入を通じて世界の食料・繊維市場とつながっているとされる。水不足による生産減少や価格変動は、巡り巡って日本の食卓や産業にも波及しうる。加えて、水力発電への依存度が高い地域で発電が止まりかねないという事態は、電力を化石燃料や原子力、再生可能エネルギーに多様に頼る日本にとっても、単一の水資源に依存するインフラの脆弱性を考えるうえで示唆に富む。