デザイン・雑貨・イベント

バリのデザイン祭典「Jia Curated」、もみ殻や塩のパビリオン披露

インドネシア の記事一覧 ・ アジア

インドネシア・バリ島で、デザインの祭典「Jia Curated(ジア・キュレイテッド)」の第5回が現地の8月13日から17日にかけて開かれた。会場は今年から島の東岸サヌールにあるプンゲンバック・ビーチに移り、テーマは「Nature Weave(自然を織る)」。もみ殻や塩のレンガでつくられたものを含む8つのパビリオンが砂浜に並んだ。デザイン専門メディアのDezeenが現地の8月18日に伝えた。

何が起きたのか

もみ殻を使ったのは、インドネシアの家具デザイナー、エウジェニオ・ヘンドロ氏によるパビリオン「Tapak Tumbuh」だ。土、収穫、植生という3つの章に分けて構成され、床のデッキと外壁、内壁は主にもみ殻と再生プラスチックでできている。表面のタイルは土壌の成り立ちや農地の地形をもとにした色と質感を持ち、床に広げられた大判のラグは、根や葉が伸びていく形を織りの模様に置き換えたものだという。

塩を使ったのは、ジャカルタを拠点にするSpatial Sonataの「Oaken Tiltroom」だ。ヒマラヤ産の塩のレンガを積み上げ、建物の一部を地面に埋め込んでいる。中では香りの製品と植物由来の飲み物が供され、見るだけでなく五感に働きかける場をめざした。

Studio Aliriの「Suar」は、インドネシアの都市部で使える土地が限られていることを踏まえた作品だ。敷地はわずか2.4メートル×4.8メートル。そこに海を向いた展望台を4段に積み上げ、限られた面積でも空間は豊かにできることを示そうとした。構造材はゴムノキの集成材で、転落を防ぐ手すりには編んだラタン(籐)を使っている。1段目の床は外へ伸ばされ、バリのヒンドゥー教の儀式で使う背の高い曲がった竹飾り「プンジョール」につながる形になっている。この作品は会期の終了後、島内のメデウィ・ビーチに移設され、公共の展望台として恒久的に使われる予定だ。

バリの伝統的な考え方を空間の骨格に据えた作品もあった。ATMAの「Sraya」は、バリの住居に用いられる空間哲学アスタ・コサラ・コサリに沿って区画を分けている。空間を神聖さの度合いで並べ、南北と東西の軸を組み合わせて中庭を中心に配置する考え方だ。Nawangsetaの「Bhumi Lingsir」は、純粋さを表す空間から始まり、複雑さや二面性、人生で出会う選択を表す領域へ進む順路をつくった。人間の多面性を示すため、バリの伝統的な仮面トペン・ブドゥ100点が並べられている。

背景

8つのパビリオンは、いずれも複数のブランドの製品や協力を組み合わせてつくられた。共同創設者のブディマン・オン氏は、この共同作業のあり方を、インドネシアで相互扶助や共同作業を指す「ゴトン・ロヨン」の精神になぞらえている。「Jia Curatedは、個々の作品を見せるだけの場ではない」と同氏は語る。狙いは、デザイナーや職人、ブランド、機関、地域社会のあいだに繋がりをつくることにあるという。

会場が海辺に移ったことが、今年のテーマにつながった。各パビリオンは目の前の風景に応答するよう設計され、素材や物、構造が周囲の環境と関わるように仕組まれている。木が屋根を突き抜け、自然の岩がそのまま座席になっている作品もあった。

出展の中心はインドネシアだが、範囲はアジア各地に及ぶ。今年はフィリピン、日本、台湾からの参加者もいた。

日本にとっての意味

もみ殻は、日本でも米の収穫のたびに大量に出る副産物だ。くん炭や家畜の敷料などに使われるものの、出る量に対して用途は限られ、多くは処理する対象として扱われている。それが床と壁になっている事例は、身近な副産物をどう扱うかについての具体的な提案になっている。

ゴムノキの集成材も日本と無縁ではない。ラテックスを採り終えたゴムの木からつくられる集成材は、家具や建材として日本にも広く流通している。産地の側でそれが建築の構造材として使われ、しかも祭典が終わったあとは公共の展望台として残る、という道筋が示された点は、輸入して使うだけの立場からは見えにくい。

祭典そのものへの接点もある。今年はフィリピンや台湾と並んで日本からの参加者がいた。バリがアジアの工芸とデザインを持ち寄る場になりつつあることは、素材の使い方を学ぶ相手としても、協業の相手としても、日本の作り手にとって実際的な意味を持つ。