森林破壊など土地利用由来のCO2排出、今世紀に入り3割減少
森林破壊や泥炭地の劣化などによる二酸化炭素(CO2)排出量、いわゆる「土地利用由来の排出」が、今世紀に入ってから減少を続けていることが、国際的な科学者チームの分析でわかった。化石燃料由来の排出が増え続ける一方で、森林破壊による排出は着実に縮小しているという。専門メディアCarbon Briefが8月17日付で伝えた。
何が起きたのか
世界の温室効果ガス排出の推移を毎年集計する「グローバル・カーボン・バジェット」報告書(今年5月に学術誌Earth System Science Dataに正式掲載)によると、森林減少や森林の劣化、泥炭地の消失、伐採などをまとめた「土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF)」由来のCO2排出は、1990年代後半以降、「統計的に有意な減少」を続けている。
具体的には、1960年から1999年までの40年間、土地利用由来の排出は年間およそ66億トンでほぼ横ばいだった。しかし1990年代後半から減少に転じ、2015〜2024年の平均は年間50億トンまで下がった。これは1995〜2004年の平均より23%、2005〜2014年の平均より19%低い水準だという。気候科学者のゼケ・ハウスファザー氏とピエール・フリードリングシュタイン氏が2025年11月にCarbon Briefに寄稿した分析では、2025年の土地利用由来排出は2000年代平均と比べて約32%減少したと述べられている。速報値では2025年の排出は年間41億トンとみられ、これも2014〜2025年の平均を下回っている。
対照的に、化石燃料とセメント生産による排出は1959年以降、10年ごとに一貫して増え続けており、1960年代の年間110億トンから2015〜2024年には359億トンに達した。2025年の速報値では過去最高の381億トンに達したという。つまり全体の排出増加を、森林や土地利用側の排出減少がいくらか相殺している構図になる。
報告書は、この減少の主因を「永久的な森林減少」の減速に求めている。永久的な森林減少とは、農地や鉱山、都市開発などへの転用を目的に森林を完全に消失させる行為を指し、伐採後に森林が再生する伐採業や移動耕作(一定期間農地として使った後に放棄し、森林が回復するのを待つ農法)とは区別される。加えて、森林の再生によるCO2吸収量の増加も要因に挙げられている。特に2015年以降の急激な落ち込みは、2015年に泥炭地火災による排出がピークを迎えたことと、2010〜2020年に多くの国で森林減少排出が長期的に減ったことが重なった結果だと分析されている。
報告書の推計では、2015〜2024年の期間、森林減少による排出は年平均69.6億トンにのぼる一方、森林の再生による吸収は年平均47.6億トンに達し、森林減少排出の3分の2ほどを相殺した。吸収量のうち22億トンは植林・再植林の取り組みによるもので、残る25.6億トンは移動耕作後の自然な森林再生によるものだという。
背景
土地利用由来の排出は、化石燃料の燃焼と並ぶ人為的CO2排出の二大要因とされてきた。特にアマゾンや東南アジアの熱帯林減少は、生物多様性の喪失とも結びつき、国際的な気候会議でもたびたび焦点になってきた分野である。ただし土地利用由来の排出量は、森林の吸収と排出を差し引きで推計する必要があり、衛星観測や統計モデルの手法によって数値が変動しやすいという性質があるとされる。今回のデータが示す減少傾向も、こうした推計の枠組みの中での「相対的な改善」であり、森林破壊そのものがなくなったわけではない点には留意が必要だろう。それでも、複数年にわたり一貫した減少傾向が確認された意味は小さくないとみられる。
日本にとっての意味
日本は木材や紙製品、パーム油、大豆、牛肉など、森林減少と関わりの深い農産品や資源を大量に輸入している国である。欧州連合(EU)が森林破壊に関わった産品の輸入を規制する制度の導入を進めるなど、国際的にサプライチェーン管理の厳格化が進むとされる中、輸入国である日本の企業や消費者にとっても、森林減少排出の推移は調達先を選ぶ際の判断材料になり得る。また、日本国内でもJ-クレジット制度など森林吸収を活用したカーボンクレジット(carbon credit、排出削減分を取引可能な形にした仕組み)の議論が続いており、世界全体で森林による吸収がどの程度進んでいるかという今回のようなデータは、その制度設計を考えるうえでの参考材料にもなり得る。悲観一辺倒になりがちな気候変動報道の中で、こうした地道な進展を正確に伝えることも、読者が現実的な政策判断をする上で役立つはずだ。