感染症・健康

ワクチン反対の声、はしかにはあまり向かず 米国の親調査で見えた偏り

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米国の研究者らが実施した調査で、他の親にワクチン接種を勧める親の割合が、接種に反対するよう働きかける親の割合を大きく上回ることが分かった。特にはしか(麻疹)のワクチンについては勧める側の話題に上っていた一方、反対する側はほとんど取り上げていなかった。研究チームはこの偏りを、はしかの流行が広がる中で公衆衛生にとって好材料になりうると指摘している。

何が起きたのか

この調査は、ノースカロライナ大学の研究者らを中心とする著者らが2026年7月に米科学誌PLOS Oneに発表した論文にまとめられている。調査は2025年に実施され、9歳から12歳の子どもを持つ親1315人を対象に、他の親へのワクチン接種に関する働きかけについて尋ねた。対象は全米の親を代表するように選ばれている。

結果は、36%の親が他の親にワクチン接種を勧めたと答えたのに対し、接種をやめるよう働きかけたと答えた親は12%にとどまった。ワクチンの重要性を強く信じている親ほど、接種を後押しする傾向が強かった。接種を勧めた親のうち、はしかワクチンを勧めたという人は50%、インフルエンザワクチンを勧めたという人は44%に上った。勧め方としては、自分の子どもの接種体験を家族や友人に伝えた人が47%、ワクチンの効果を示すデータを共有した人が38%、自分の推奨を伝えた人が35%だった。

一方、接種に反対するよう働きかけた親の間では、話題は新型コロナウイルスワクチンへの懸念が53%、インフルエンザワクチンへの懸念が41%と多くを占め、はしかワクチンについて触れた人は10%にとどまった。著者らは「勧める側がはしかワクチンについてよく取り上げていたことを踏まえると、接種率を高める今後の取り組みでは、この病気の憂慮すべき再流行を食い止めるため、こうした親たちと連携する方法を検討すべきだ」と述べている。

背景

米国では近年、はしかなど本来ワクチンで防げる感染症の患者数が増加していると報じられており、専門家の間では接種への理解をどう広げるかが課題として議論されてきた。今回の調査結果が示すのは、新型コロナウイルスワクチンを巡って広がったとされる不信感が、はしかなど従来からある子ども向けワクチンにはそれほど及んでいない可能性があるという点だ。反対を呼びかける親の話題がコロナとインフルエンザに集中し、はしかにはあまり向かっていないという偏りは、公衆衛生当局にとって追い風とも言える。

親同士の口コミが接種行動に与える影響は、行政からの呼びかけとは別の経路として近年注目されてきた。医療機関や公的機関の情報発信だけでなく、身近な親が自分の子どもの体験を語ることが、接種をためらう親の背中を押す場合があるとみられている。今回の調査は、こうした「親から親へ」の働きかけが実際にどの程度起きているかを数字で示した点に意味がある。

日本にとっての意味

日本でもワクチン忌避、つまり副反応への不安などから接種をためらう動きは長年の課題となってきた。子宮頸がんを防ぐHPVワクチンは、副反応の報告を受けて国が積極的な接種の呼びかけを一時差し控え、その後呼びかけを再開した経緯があり、こうした制度上の対応が接種率にどう影響するかは今も議論が続いている。はしかと風疹を防ぐMRワクチンは定期接種の対象だが、海外からの持ち込みによる感染例がたびたび報告されており、渡航者を含めた接種状況は公衆衛生上の関心事であり続けている。

今回の米国の調査が示すように、親同士の会話が接種行動に影響を与えるという構図は、制度や医療体制が異なる日本でも参考になりうる。行政による広報だけでなく、実際に接種した親の体験や情報共有が接種をためらう人の判断に影響するとすれば、啓発のあり方を考える上で一つの手がかりになる。