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カナダ政府の先住民アート収蔵品、111点が所在不明のまま

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カナダ連邦政府の先住民アート・センター(Indigenous Art Centre)が保管する現代先住民アートの所蔵品のうち、111点の所在が依然として確認できていないことが分かった。2024年11月の内部監査で132点が所在不明とされてから約1年9か月が経つが、いまだ全容解明には至っていない。

何が起きたのか

Indigenous Art Centreは1965年にカナダ連邦政府が設立した機関で、先住民(First Nations、Métis、Inuit)の現代アートの制作・普及・保存を支援してきた。センターの所蔵品は5000点超、作家990人以上に及び、審査員による選定を経て収集されたもので、総額は約1440万カナダドル(約1040万米ドル)と評価されている。所蔵作家にはノーヴァル・モリソー(Norval Morrisseau)やケント・モンクマン(Kent Monkman)ら著名な先住民アーティストも含まれる。

2024年11月にまとめられた内部監査(2019年4月から2024年8月までの運営を対象)は2025年10月、センターを所管する連邦省庁「Crown-Indigenous Relations and Northern Affairs Canada(CIRNAC)」のウェブサイトで公表され、132点が所在不明と指摘されていた。CIRNACによれば、その後の調査で17点の状況が判明した。6点は保管施設内で見つかり、11点はデータベース上の重複登録と分かった。さらに4点が重複登録の疑いありとして精査中で、結果として111点が依然「所在不明」のままだという。

CIRNACの広報担当者マリエヴァ・メテリュス(Maryéva Métellus)氏は「所在不明という表示は、作品が紛失または盗難に遭ったことを意味しない」とし、手元の記録では保管場所を確認できていないことを示す在庫・記録管理上の分類だと説明する。刑事捜査は行われていないとしている。なお111点のうち20点は複製品だという。

一方、センターに1980年代の作品が収蔵されている先住民アーティストのローレンス・ポール・ユクスウェルプトゥン(Lawrence Paul Yuxweluptun)氏は強く反発し、「政府の無能さを示す一例にすぎない」と述べ、センターの閉鎖と、カナダ・カウンシル・フォー・ジ・アーツ(Canada Council for the Arts、連邦の芸術振興機関)への管理移管を求めた。他方、モリソーの遺産管理を担うコリー・ディングル(Cory Dingle)氏は、今回の件をカナダの文化的な歩みにとって前向きな契機と捉えていると語り、比較的穏やかな受け止めを示した。

背景

カナダでは先住民の文化財返還・保存が長年の課題となってきた。植民地時代からの同化政策の中で先住民の芸術や文化が周縁化されてきた反省から、連邦政府自らが先住民アートの収集・支援に乗り出したのがIndigenous Art Centreの設立経緯とみられる。しかし今回明らかになったのは、その国自身が管理する所蔵品でさえ、数十年にわたる取得・展示・貸与・保管・移管の履歴が記録として十分に整理されておらず、追跡できていないという実態だ。CIRNAC側も、歴史的な在庫記録や貸与・展示記録、保管記録、収蔵品管理データベースを突き合わせる作業が必要だと認めており、単純な紛失というより、長年の記録管理の不備が積み重なった結果である可能性が高い。

日本にとっての意味

日本でも、アイヌ民族の遺骨や副葬品、文化財の扱いは公的機関の管理体制が問われ続けてきたテーマだ。北海道白老町の民族共生象徴空間「ウポポイ」への遺骨集約など、国が主体となって先住民族の遺骨や文化財を一元的に保存・公開する取り組みが進められているが、集約後の記録管理や当事者コミュニティへの説明責任については、継続的な検証が欠かせない。カナダの事例は、国自らが「保護する」立場で預かった先住民作家の作品ですら、長期にわたる保管・貸出の履歴を追いきれなくなるという、制度運用の脆さを示している。作品を「集める」ことと同じくらい、「記録し続ける」体制づくりが重要だという教訓は、アイヌ関連施設に限らず、公立美術館・博物館全般の収蔵品管理を考えるうえでも参考になる。