気候・災害

海洋熱波が記録更新、COP31で保護のロードマップ模索

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アフリカ諸国や欧州連合(EU)などが、国連気候変動枠組条約第31回締約国会議(COP31)で、海洋を守るための具体策を正式な交渉文書に盛り込むよう求めている。背景には、観測史上最も暑い7月を記録した世界の海と、サンゴなど海洋生物の大量死への懸念がある。COP31の議長国トルコと、交渉議長を務めるオーストラリアは、この要求を受けて任意の「海洋ロードマップ」の策定に向けて関係国と協議を進めている。

何が起きたのか

EUと米国それぞれの観測データによると、今年7月の世界の海水温は、7月としては観測史上最高を記録した。今年は地球温暖化に加えて大規模な「スーパーエルニーニョ」が発生するとみられており、その影響が重なった形だ。サンゴ礁などの生態系は水温が約1度上昇するだけで悪影響が出始めるとされるが、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の海洋生態学者ジョン・ブルーノ氏によれば、地中海など一部の海域では海洋熱波(平年より著しく高い海水温が続く現象)によって水温が最大6度も上昇したケースがあるという。

こうした状況を受け、アフリカ諸国、EU、一部のラテンアメリカ諸国、小島嶼国が連携し、COP31で海洋保護策を「交渉によって合意される決定事項」に組み込むよう求める動きを起こした。これまで国連気候交渉での海洋をめぐる議論は、会期中の非公式な対話に限られてきた。トルコとオーストラリアはこの要求に応じ、地域・国際レベルでの対策を統合した「簡潔な行動計画」として海洋ロードマップの策定を検討している。9月にはトルコで、アジア太平洋・アフリカ・欧州・ラテンアメリカから25人以上の閣僚が集まる会合が予定されており、既存の非公式対話の提言を世界の気候政策にどう組み込むかが議題になる見通しだ。また、150人を超える科学者や専門家らがトルコとオーストラリアに対し、緩和策・適応策・資金の交渉文書に海洋の課題を組み込むよう要請し、COP会期中の首脳級会合での明確な政治宣言と資金面の成果も求めている。

背景

国連気候交渉で海洋が本格的に扱われるようになったのは比較的最近のことだ。2021年にグラスゴーで開かれたCOP26で、各国は気候交渉全体に海洋関連の対策を統合・強化することに合意し、これを受けて毎年非公式に開かれる「海洋と気候の対話」が始まった。ただしこの対話は、他の交渉分野のような正式な合意文書を生み出す仕組みではない。米環境NGOオーシャン・コンサーバンシーのホイットニー・ベリー氏は、こうした非公式な対話であっても複数年にわたる計画として位置づけられれば、パリ協定の枠組みで5年ごとに実施される各国の気候対策の総点検「グローバル・ストックテイク」と連動させることができ、海洋対策を気候政策全体に組み込む大きな契機になりうると指摘する。次回のストックテイクは2028年のCOP33で取りまとめられる予定だ。

非営利団体WRI(世界資源研究所)が6月に公表した論文によれば、各国が提出する気候対策計画のうち海洋関連の目標を1つ以上含むものは、2015年の62%から昨年は90%まで増えた。それでも資金や統治体制の制約から実行が伴っていないとされる。また現在の目標の多くは海洋保護区の設定など保全に偏っており、洋上風力発電や海運の脱炭素化といった、海上で排出される温室効果ガスそのものを減らす取り組みへの言及は少ないという。海は「世界最大の炭素吸収源」とされるが、水温上昇によってこの吸収能力自体が弱まりつつあると懸念されている。

日本にとっての意味

海洋熱波によるサンゴや藻類の大量死は、遠い海の話に見えて日本の食卓とも無縁ではない。日本近海でも近年、水温上昇に伴う漁場の変化やサンゴの白化が報告されており、世界的な海洋熱波の頻発は、日本が輸入に頼る水産物の供給や価格にも波及しうる。日本近海だけでなく、まぐろ類などを漁獲する太平洋やインド洋の漁場でも水温変化は魚の分布や漁獲量に影響するとみられ、日本の漁業関係者や輸入業者にとって間接的な経営リスクとなりうる。

加えて、COP31で海洋保護策が正式な交渉文書に組み込まれれば、日本を含む各国の気候対策計画に海洋関連の目標を盛り込む圧力が強まる可能性がある。洋上風力発電や海運の脱炭素化は日本も政策課題として掲げている分野であり、国際的な資金や基準づくりの議論に日本がどう関わるかは今後の産業政策にも関係してくる。COP31での海洋をめぐる交渉の行方は、水産資源の持続可能性とエネルギー政策の両面で、日本にとっても注視する価値がある。