感染症・健康

米ワクチン接種調査、学歴・年齢・人種で拒否理由に差

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米国の看護学研究チームが、新型コロナワクチンの接種状況に関する大規模調査を分析し、未接種の理由や割合が学歴・年齢・人種によって大きく異なることを明らかにした。政府機関への不信感を持つ人でも実際には接種を受けていたケースが多く、医師への信頼は比較的高く保たれていたという。

何が起きたのか

米ラッシュ大学看護学部の研究チームが、学術誌ヴァクシーン(Vaccine)に発表した分析によると、2020年11月から2022年11月にかけて実施された「コミュニティ・エンゲージメント・アライアンス共通調査2」に参加した米国成人1万3802人のうち、少なくとも1回はワクチンを接種していた人は87.2%だった。

人種別では、非ヒスパニック系白人の接種率が91.8%と最も高く、ヒスパニック系が87.9%、非ヒスパニック系黒人が81.8%だった。学歴による差も大きく、高校卒業資格を持たない人の未接種率は約21%に上ったのに対し、大学院修了者では6.2%にとどまった。年齢別では、65歳以上の未接種率が5.5%と低い一方、18〜24歳の若年層では17.5%に達した。健康保険の有無も接種率に影響しており、無保険者の未接種率は25%で、保険加入者(11%)の倍以上だった。

政府機関への不信感を示した回答者は多かったが、それが必ずしも未接種につながっていたわけではない。各種機関への不信を示した人々でも接種率は72.4%から83.8%の幅にとどまり、米食品医薬品局(FDA)によるワクチンの安全性確保を信頼しないと答えた人でも、52.0%は少なくとも1回接種していた。自分の主治医を情報源として信頼しないと答えた人は5%未満で、政府機関に比べて医師への信頼は際立って高かった。

未接種者1772人に絞ると、その理由は人種・年齢・学歴・就業状況によって傾向が異なっていた。例えば「ワクチンは効かない」と考える人の割合は25〜34歳で10.4%と最も高く、年齢が上がるほど下がり、65歳以上ではわずか2.7%だった。また、家族や文化的な理由でワクチンに反対だったと答えた人の割合は、ある集団で67.2%に達した一方、白人では11.4%にとどまるなど、大きな差が見られた。

背景

新型コロナのワクチン忌避は、パンデミック以前から米国社会に存在していた問題だが、緊急使用許可という異例の枠組みでのワクチン投入や、公衆衛生当局の発信の一貫性を欠いた対応が、研究チームの言葉を借りれば「ワクチン忌避という並行するパンデミック」を生んだとされる。今回の研究チームは、2021年5月から2022年9月の期間だけでも、米国内で未接種を原因とする予防可能な死者が約25万人に上ったとする過去の推計を引用しており、コロナ流行によって米国の平均寿命は約2年短縮したという。

米国では医療保険制度が公的な国民皆保険ではなく、雇用主提供の保険や個人加入が中心となっている。無保険者ほどワクチン接種率が低いという今回の結果は、経済的な事情や医療アクセスの格差が、単なる「ワクチンへの不安」以上に接種行動を左右している可能性を示している。また、政府機関への不信が広がる一方で、医師を情報源として信頼しないと答えた人は5%未満にとどまったという結果は、公衆衛生対策において誰が情報を伝えるかという「発信者の信頼性」が、内容そのもの以上に重要になりうることを示唆している。

日本にとっての意味

日本でも新型コロナワクチンの接種率には年齢層や地域による差があり、高齢者では接種率が高い一方、若年層で伸び悩む傾向が報告されてきた。今回の米国調査が示すように、未接種の理由は「ワクチンへの不信」という一言では片づけられず、年齢・学歴・就業状況・保険加入の有無といった生活背景によって細かく異なる。

また、この調査が示した「政府機関への不信が広がっても、医師への信頼は保たれている」という構図は、日本の医療現場にも参考になりうる。研究チームは、医師が患者に説明する役割にはまだ活かしきれていない余地があるとしており、行政からの一律の呼びかけだけでなく、地域の医療従事者を通じた丁寧な説明が接種率向上に寄与する可能性を示唆している。今後、インフルエンザワクチンや高齢者向け定期接種など、日本国内で接種率の伸び悩みが課題となる場面において、こうした属性別分析の視点は政策設計の参考材料になる。