米ベルビュー、12階建て木造オフィス棟計画 全米最高に
米ワシントン州ベルビューで、12階建ての木造(マスティンバー)オフィスビル「Bevel(ベベル)」の建設が計画されている。設計は英国の建築事務所ウォー・シスルトン・アーキテクツと米国の設計事務所ミスン(Mithun)。完成すれば、米国で最も高い木造オフィスビルになるという。デザイン誌Dezeenが8月17日付で伝えた。
何が起きたのか
Bevelは、開発と施工を手がけるスカンスカのために設計された高さ55メートルのオフィスビルで、木と鉄骨を組み合わせたハイブリッド構造をとる。マスティンバー(ひき板などを集成した大断面の構造用木材)の柱・梁・天井は、覆い隠さず建物全体であらわしにする。米国の木材利用推進団体ウッドワークスによれば、完成すれば米国で最も高い木造オフィスビルとなる。
ウォー・シスルトン・アーキテクツにとっては、これが米国での最初のプロジェクトにあたる。共同創設者のアンドリュー・ウォー氏は「Bevelは私たちにとって米国で最初に建つプロジェクトになるが、それ以上に重要なのは、この規模の建物によって、木材が米国建築の最前線に立つ用意ができていると示せることだ」と述べている。
ウッドワークスのジェニファー・カバーCEOは「Bevelは全米一高い木造オフィスビルになる点で注目されるが、この種のプロジェクトで何が可能かという考え方を広げるものでもある」と語る。「建設中または完成済みの高層木造建築22棟のうち、商業ビルは3棟しかない。天井を100%木材あらわしにする承認を得るためにも膨大な作業が費やされた。この2つの面で、Bevelは他の設計者が使える選択肢を前に進める先例になっている」
背景
構造は、基礎と地下駐車場をコンクリートでつくり、地上部分を木造とする構成で、鉄骨のコアと耐震部材がこれを支える。内装設計も担うミスンによれば、木造を選んだことで、コンクリート造よりも魅力的な平面計画が可能になったという。
ミスンのパートナー、クレイグ・カーティス氏は「プロジェクトの初期に、マスティンバー案とコンクリート造案を並べて検討した」と話す。「この狭い敷地では、コアを中央に置く標準的なコンクリート造だと、オフィスの床が細長くなり、賃貸面積のつながりも悪くなる。対してマスティンバー案はコアを片側に寄せた開放的な床を実現でき、テナント誘致の面でも強く、独自の執務環境をつくれる。この検討では、効率的な木造設計と工期短縮の効果もあって、マスティンバーはコンクリートと同等のコストに収まった」
ウォー・シスルトン・アーキテクツは、世界初期のマスティンバー高層建築や、世界最大の直交集成板(CLT)建築など、数多くの木造建築を設計してきたことで知られる。
日本にとっての意味
日本でも建築基準法の改正が重ねられ、中高層の木造ビルが各地で建ち始めているが、オフィスビルでの採用はまだ道半ばだ。カバー氏が挙げた「高層木造22棟のうち商業ビルは3棟」という数字は、住宅や公共施設が先行し、収益性が問われるオフィスが遅れるという構図が米国でも同じであることを示している。その中でBevelが示したコスト同等という検討結果や、コアを片側に寄せて床を広く使う木造ならではの平面計画は、日本のデベロッパーや設計者にも参考になる。
また、地震のある米西海岸で、鉄骨コアと耐震部材を組み合わせたハイブリッド構造をとる点や、木の天井をあらわしにするために防火面の承認へ膨大な労力を割いた点は、耐震と防火の規制の下で木造化を進める日本の状況と重なる。都市の木造ビルをどこまで「木らしく」見せられるかは日本でも課題であり、Bevelはその先行事例の一つになる。