AfD共同党首、ユーロとシェンゲン圏からの離脱を要求
ドイツの野党「ドイツのための選択肢」(AfD)の共同党首アリス・ワイデル氏が、現地時間8月23日に放送された公共放送ZDFのインタビューで、AfDが連邦政府に加わった場合はユーロとシェンゲン協定圏からの離脱を目指すと述べた。国境を封鎖し、移民政策を厳格化する方針も示した。AfDは現在、9月の州議会選挙を控えたザクセン・アンハルト州で世論調査支持率が40%を超え、全国レベルでも与党キリスト教民主同盟(CDU)を上回る勢いを見せている。
何が起きたのか
ワイデル氏はZDFの「サマーインタビュー」で、「ユーロ導入前のドイツの方が明らかに良かった」と述べ、共通通貨ユーロがドイツ経済を弱め、家計の資産を目減りさせたと主張した。
移民政策については「国境を封鎖し、シェンゲンを離脱する」と明言し、国外退去の強化と帰化の抑制、さらに保護資格が失効したシリア人の送還も求めた。ワイデル氏はまた、内燃機関車の販売禁止計画と人為的な気候変動対策への反対姿勢も改めて表明した。
さらに、メルツ首相率いるCDUと、財務相を務める社会民主党(SPD)を批判し、CDUがAfDとの協力を拒んでいることを非難した。そのうえで、州レベルでまず政権を取り、連邦レベルでも政権を取ると述べた。世論調査機関Forschungsgruppe Wahlenによると、AfDは現地の9月6日投票のザクセン・アンハルト州議会選挙に向けて支持率40%超、全国支持率でも27%とCDUの22%を上回っている。
背景
ユーロは1999年に導入された欧州連合(EU)の共通通貨で、ドイツはその発足時からの主要参加国である。シェンゲン協定圏は加盟国間で国境検査を原則廃止する仕組みで、EU域内の人の移動の自由を支えてきた。いずれもEU統合の中核をなす制度であり、離脱は単なる政策変更ではなく、ドイツの経済構造や欧州内での立場を根本から変えることになる。
AfDは2013年にユーロ懐疑派の経済学者らを中心に結成された政党で、当初から反ユーロを主要な看板の一つとしてきたが、近年は移民排斥や反EUの立場を前面に押し出し支持を拡大してきたとされる。旧東ドイツ地域を中心に支持が強く、ザクセン・アンハルト州の高い支持率もその傾向を反映しているとみられる。
ドイツの主要政党はこれまでAfDとの連立や協力を拒む「防火壁」と呼ばれる姿勢を保ってきたが、支持率の上昇が続けば、この姿勢が今後も維持できるかが焦点になるという指摘がある。
日本にとっての意味
AfDの支持率上昇や選挙結果自体は日本でも折々報じられてきたが、共同党首が掲げる政策の中身、とりわけユーロやシェンゲンからの離脱要求まで具体的に伝えられる機会は少ない。
ユーロ圏最大の経済大国であるドイツで、こうした主張を掲げる政党が州政権、さらには連邦政権に加わる可能性が現実味を帯びれば、ユーロ相場の先行きに対する市場の不透明感が高まる要因になり得る。ドイツには自動車や化学、機械などの分野で多数の日本企業が生産・販売拠点を置いており、通貨制度や国境管理、移民労働力をめぐる制度が大きく変われば、現地でのサプライチェーンや人材確保、為替リスクの前提が変わることになる。
現時点でAfDが連邦政権を主導する見通しが立っているわけではないが、州議会選挙での動向は、こうした政策が現実の政治日程に乗るかどうかを測る一つの目安として注視する価値がある。