ブラジル、再エネ企業が自らデータセンター建設 住民に負担のしわ寄せ
ブラジルで、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの企業が、自らデータセンターの建設に乗り出す動きが広がっている。インターセプト・ブラジルとモンガベイの共同調査によると、データセンターを送電網につなぐ接続申請のうち65%が再エネ企業からのものだった。世界的にはデータセンター向けの電力確保に苦労する企業が多いなかで、ブラジルでは電力会社の側が需要を作り出そうと動いているという、逆転した構図が浮かび上がっている。
何が起きたのか
調査は、2025年12月までにブラジル鉱山エネルギー省に示された計画に限って集計したもので、37の自治体にまたがる68件の接続申請が確認された。通常、データセンターは電力を大量に消費する側として電力会社に接続を求める立場にあるが、ブラジルではむしろ発電事業者自身がデータセンターの建設を持ちかけている。
調査は、計画が予定されている地区の約8割が、伝統的な暮らしを営む人々の土地と重なっていることも明らかにした。住民は水循環や生物多様性への影響といったリスクを知らないままだ。企業が余剰電力の活用で利益を得る一方、送電網増強の費用負担や騒音、水資源への影響は住民に及びかねないという構図を、調査は指摘している。
具体例として挙げられているのが、ミナスジェライス州パラカトゥにある太陽光発電会社アトラスの案件だ。同社は2025年、送電網の運用機関(ONS)の指示で、同州の発電所の出力を約4割減らすよう求められた。これを受けて2025年末、同じ用地に1ギガワット級のデータセンター群を建設する計画を鉱山エネルギー省に提出した。3件計画されているうちの1件目で、同社は「地域の需給バランスを最適化し、発電の制約を緩和すること」を狙いとして説明している。
背景
ブラジルでこうした事態が起きる背景には、発電設備の増加ペースに送電網の整備が追いつかないという構造的な問題がある。受け入れきれない電力は「出力制御(curtailment、送電網が受け入れきれない分の発電を止めること)」によって止められており、2025年上半期だけで発電企業側の損失は32億レアル(約6億1200万ドル)に上ったとされる。
データセンターが電力会社にとって魅力的な買い手なのは、工場や家庭のように需要が変動する顧客と違い、24時間ほぼ一定の電力を消費し続けるためだ。パライバ連邦大学(UFPB)の再生可能エネルギー技術者で気候活動家のミカエリ・ファリアス氏は「再エネ企業はデータセンターやビッグテック企業と長期の電力購入契約(PPA)を結ぶことができる」と述べ、これによって余剰分を送電網に流すことなく、15年から20年にわたって売り続けられると説明する。自動車の電動化のような他分野の需要と比べても、データセンターは財務的に信頼できる顧客だという。
ブラジル政府も、この流れを後押ししてきた。鉱山エネルギー省のアレシャンドレ・シルベイラ大臣は2025年1月、スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラムで、自国の再エネの豊富さを、脱炭素に投資したい世界の投資家に向けて売り込んだ。業界団体の側も歩調を合わせており、ブラジル風力エネルギー協会はデータセンター業界の団体と合同で会合を開き、「データセンターと環境:あなたが思うより影響は小さい」と題したパネルを催している。取材に応じた専門家や活動家からは、両業界の結びつきはエネルギー転換への貢献というより、商機と利益を優先した動きだという見方が示されている。
日本にとっての意味
国際エネルギー機関(IEA)の試算では、世界のデータセンターの電力消費量は今後、2030年までに945テラワット時に達する可能性があり、これは日本の年間電力消費量に匹敵する規模だという。AIがそのうちの4割を占める見通しで、データセンター向けの電力需要急増は、ブラジルに限らずどの国にとっても差し迫った課題になりつつある。
日本国内でも、太陽光発電の拡大ペースに送電網の容量が追いつかず、九州などで出力制御が行われてきた。供給過剰となった再エネの受け皿としてデータセンターを誘致するという発想は、日本の電力・データセンター政策の議論でも取り上げられており、構図としてはブラジルの事例と重なる部分がある。
ブラジルの事例が示すのは、再エネが余っているという理由だけでデータセンターを誘致しても、その利益が発電企業とテック企業のあいだで完結し、送電網増強の費用や騒音、水資源への影響といった負担は地域住民に及びかねないという点だ。日本で再エネ拡大とデータセンター誘致を結びつける議論をする際にも、恩恵とコストが誰にどう配分されるのかを丁寧に検証する必要性を示す事例だといえる。