南極海のオキアミ漁、2年連続で漁期途中の早期終了
南極海で行われているオキアミ漁が、現地時間の8月12日、漁獲量が年間の漁獲枠である62万トンに達したため、通常より3カ月以上早く操業を終えた。早期終了は2025年に続いて2年連続で、南極の生態系を支えるオキアミへの漁獲圧が強まっていることを示す出来事として、科学者らが注視している。
何が起きたのか
この漁期の終了は、ノルウェーのオスロで現地の8月10日から14日まで開かれた南極研究科学委員会(SCAR)の公開科学会議で、出席していた研究者らによって確認された。英国南極観測局の海洋・漁業生態学者シメオン・ヒル氏はMongabayの取材に対し、「漁業はすでに62万トンのオキアミを漁獲したため、(11月末より前に)早期に終了した」と述べた。
オキアミ(Euphausia superba)は体長6センチ(2.4インチ)ほどのエビに似た甲殻類で、群れをなして生息し、アザラシやクジラ、ペンギン、海鳥、魚、イカなど南極海の幅広い生物の餌となっている。この62万トンという上限は、影響を受けやすい捕食動物の採餌場への悪影響を防ぐための予防的措置として、1991年に南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)第10回会合で定められたものだ。
漁期の早期終了自体は現地時間の2025年8月1日に初めて起きており、今年も同様の展開になることは広く予想されていたという。
背景
早期終了の背景には、オキアミを狙う漁船団の拡大と、漁獲が特定の海域に集中している状況がある。CCAMLRの最新の漁業報告によると、2025年の総漁獲量は62万4917トンで、ノルウェー船団が52.2%、中国船団が37%を占め、韓国、チリ、ウクライナが続いた。ノルウェー企業アーカー・クリル(Aker Qrill、親会社はアーカー・バイオマリン)は2026年に4隻目の漁船を追加する計画を発表し、CCAMLRは今年、中国の6隻目の漁船に許可を出した。
漁獲が集中している南極半島やサウスオークニー諸島周辺は、オキアミの密度が高い一方で野生生物の主要な採餌場とも重なっている。もともとは、漁獲努力を4つの管理区域に分散させ、野生生物との競合を減らす「保全措置51-07」があったが、2024年に失効し、更新交渉は漁業管理の抜本的な見直し提案に取って代わられた。
ノルウェーは2025年10月のCCAMLR会合で、上限を撤廃し漁獲量をほぼ倍増させかねない新たな管理方式を提案したが、採決前に取り下げた。その後もアーカー・バイオマリンは、10月に予定される次回会合に向けて同様の合意を目指して働きかけを続けているという。ブルー・マリン財団のマクシミリアーノ・ベロ氏は、ノルウェーと中国が漁獲枠拡大を求める一方、アルゼンチンやチリなどは南極半島に実効性のある海洋保護区を設けることを求めており、両陣営の外交的な対立が続いていると説明している。
日本にとっての意味
日本もCCAMLRの加盟国で、南極海の漁業管理をめぐる意思決定の当事者の一つだ。今回の報道には日本漁船の操業実態は出てこないが、オキアミは養殖用飼料やペットフード、オメガ3系の健康食品原料として世界的に流通しており、日本の養殖業や健康食品市場もこうした供給網とつながっている可能性がある。
ノルウェーが目指しているような漁獲枠拡大が実現すれば、供給量や価格に影響しうる一方、資源の持続可能性そのものが揺らぐ懸念もある。CCAMLRは、南極海の生態系保護と漁業産業の利害がせめぎ合う場であり、加盟国としての日本の立場や今後の対応も、10月に予定される次回会合の行方とあわせて注目される。