インドネシア大規模森林火災、放火容疑で72人立件 煙害拡大
インドネシアのボルネオ島とスマトラ島で森林火災が広がり、現地当局は土地の火入れをした容疑で72人を立件したと発表した。1月から現地時間8月24日までの焼失面積は両島で合わせて約28万6000ヘクタールに上り、バリ島の面積の半分に相当する。煙は近隣のマレーシアにも及び、住民の健康被害も広がっている。
何が起きたのか
インドネシアの警察当局は、ボルネオ島側の5州とスマトラ島側の4州にまたがる森林火災について、植え付け前の土地を焼き払う目的で意図的に火をつけたとして72人を立件した。押収品にはライター、燃料容器、山刀、斧のほか、焼けた土壌や樹木の試料が含まれるという。焼失面積の集計は森林マッピングを手がけるヌサンタラ・アトラス(Nusantara Atlas)の衛星監視ツール「ファイアウォッチ(FireWatch)」によるもので、当局は今年の乾燥した気候と強いエルニーニョ現象が火災を悪化させたとしている。
煙による濃霧(ヘイズ)は1つの州で視界を10メートルにまで悪化させたと米AP通信は伝えている。健康被害も深刻で、被害が大きい6州ではインドネシア保健省が急性呼吸器感染症の急増を報告した。中カリマンタン州では1週間で症例数が402件から716件へと78.1%増え、西カリマンタン州では1月以降の累計が15万1000件を超えたという。西カリマンタン州では、絶滅危惧種であるボルネオオランウータンを60頭以上保護している非営利団体YIARIのリハビリ施設の近くにまで火の手が迫った。カニクイザルなど野生動物が植生の焼失により餌不足に陥っているとの報告もある。
インドネシア国家防災庁(BNPB)は、局所的な茂みや森林の火災71.5ヘクタールと、優先度の高い泥炭地・森林火災454ヘクタールの合わせて526ヘクタールを消火・封じ込めたと発表した。航空機からの散水に加え、軍部隊や消防士、ボランティアなど数万人規模の人員が地上で消火にあたっている。地中深くでくすぶり続ける泥炭火災に対しては、水を張った溝を掘って延焼を防ぐ手法がとられ、当局は人工降雨を促すためのクラウドシーディング(雲に薬剤を散布し降雨を誘発する技術)も実施している。
背景
インドネシアでは乾季になると、農園開発や再植林のために森林や泥炭地を焼く「火入れ」が各地で行われる。泥炭地は一度火がつくと地中深くで長期間くすぶり続け、大量の煙を発生させやすいとされる。今年は強いエルニーニョ現象の影響で乾燥が長引き、火災が広がりやすい条件が重なったと当局は説明している。
こうした火災による煙害は「ヘイズ」と呼ばれ、東南アジアでは繰り返し問題になってきた。特に2015年には記録的な規模の森林・泥炭地火災が発生し、インドネシア国内だけでなくマレーシアやシンガポールにも深刻な大気汚染をもたらし、地域経済にも大きな打撃を与えたことが知られている。