タンザニア副大統領が辞任表明、大統領が別の副大統領を望んだためと説明
タンザニアのエマニュエル・ンチンビ副大統領が辞任を表明し、政界からの引退も明らかにした。理由として、サミア・スルフ・ハッサン大統領が別の副大統領を望んでいると確信するに至ったことを挙げている。辞任は現地の9月4日付で発効する。
何が起きたのか
ンチンビ氏は現地の8月25日、ハッサン大統領宛てに書簡を送り、副大統領を辞し公職と現役の政治活動から退くと伝えたと明らかにした。同氏は2025年8月、大統領が別の副大統領を望むなら身を引くと約束していたと説明し、今回「疑いの余地なく」大統領がそうした変更を望んでいると確信するに至ったと述べた。
辞任表明の1週間足らず前には、当局が政権に批判的な新聞ムワナハリシ(MwanaHALISI)の発行免許を6か月間停止していた。同紙は、ンチンビ氏が辞任圧力に抵抗しているとの情報や、同氏とハッサン氏の間に不和があるとの見方を報じていた。当局は停止の理由として、正確性・公平性・裏付け確認に関する専門基準への違反を挙げている。免許停止と辞任表明の時期が近いことから、辞任の経緯をめぐって一層の詮索を招くとみられる。
背景
ハッサン氏は2021年の就任当初、野党や報道機関への締め付けを緩めたとして評価されていた。だが最近は野党側から、前任のジョン・マグフリ氏時代を思わせる統制的な路線に回帰しているとの批判が出ている。
ハッサン氏は昨年の大統領選で98%の得票を得て圧勝したが、国際監視団は選挙過程を問題視しており、選挙をめぐる混乱で数百人の死者が出たとされる。国境なき記者団の報道自由度ランキングでタンザニアは180か国中117位とされ、報道の自由をめぐる状況は依然厳しいとみられる。
ンチンビ氏は同国の要職の一つである副大統領職に就いてから1年に満たない時期での辞任となり、政権内に不和があるとの見方を呼ぶ材料が重なった形だ。
日本にとっての意味
東アフリカの政権内部の人事は、著名な政治家が絡まない限り日本のメディアではほとんど取り上げられない。しかし副大統領の辞任という政権内部の不和をうかがわせる動きは、外から見えにくい政治的緊張が表面化する前触れであることが多く、こうした動きを追っておくことは、後に起きる大きな政治的混乱を理解する手がかりになる。
野党指導者が反逆罪で裁判にかけられるとの報道と合わせて読むと、選挙後のタンザニアで政権の内と外の双方に緊張が走っている様子が見えてくる。
日本の読者が海外ニュースに触れるのは、多くの場合クーデターや大規模な弾圧といった危機が表面化した段階だが、その手前にある小さな兆候を知っておくことで、突発的に見える出来事の背景を理解しやすくなる。タンザニアは日本の投資や援助の対象国ともされ、政治的な不安定さは投資環境や二国間関係にも影響しうる要素として注視する価値がある。