気候・災害

重要鉱物採掘急増、多くはグリーンエネルギー向けでないとの報告

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米国のシンクタンク、オークランド・インスティテュート(Oakland Institute)が発表した報告書は、世界的な重要鉱物(critical minerals)採掘の急拡大について、その多くが再生可能エネルギーの普及を理由に正当化されているものの、実際には別の産業向けであると指摘した。報告書は特にアフリカ諸国で、土地収奪や水質汚染、生活基盤の破壊といった被害が既に生じていると警告している。

何が起きたのか

報告書「RUSH: Global Scramble for Minerals Wages War on People and Planet」は、鉱山開発の拡大が世界的な脱炭素化に不可欠だとする一般的な言説に異を唱えている。同研究所の政策部門責任者フレデリック・ムソー氏はMongabayに対し、「鉱物採掘の強化はすでに世界各地で、土地や生活、水資源を破壊するという壊滅的な結果をもたらしている」と述べ、今後の採掘拡大がこの被害を一層深刻にすると警告した。

2000年から2024年にかけて、ニッケルの生産量は187%、レアアース(希土類)の採掘量は329%、リチウムの生産量に至っては1602%増加した。国際エネルギー機関(IEA)は、銅、黒鉛、リチウム、コバルト、レアアース、ニッケルの6鉱物の需要が今後も急増し、クリーンエネルギー技術由来の鉱物需要全体は2040年までに少なくとも倍増すると予測している。

しかし報告書によれば、現在生産されている重要鉱物の大半は、実は再生可能エネルギー分野以外の産業向けだという。太陽光・風力発電、蓄電池、送配電網向けの需要は全体の約5分の1にとどまり、残りは防衛・航空宇宙、従来型の輸送、AIデータセンター、建設業などが占めている。

世界の既知の鉱物埋蔵量の30%を抱えるアフリカでは、影響が特に大きいとされる。鉱物を産出するアフリカ諸国のうち、国内で加工処理される鉱物の割合は15%未満にとどまり、付加価値を生む加工の大部分は域外で行われている。一部の政府は国内での加工や産業化を進めようとしているが、報告書は採掘や加工に対する管理権が強まったとしても、それが地元コミュニティの利益や雇用創出に本当につながるのかという疑問を投げかけている。

ムソー氏はザンビアとコンゴ民主共和国(DRC)を、採掘強化のリスクを示す例として挙げた。ザンビアでは銅山が国内電力の半分以上を消費する一方、送電網につながっている世帯は43%にとどまる。DRCでは、鉱山操業が発電量の60%以上を消費する一方、電力にアクセスできる人口は5分の1未満だという。ムソー氏は「銅とコバルトの採掘を大幅に拡大する計画があるが、それらの国では数十年に及ぶ採掘の結果、土地収奪や河川の大規模な汚染、生活基盤の破壊が続いてきた」と述べた。

背景

電気自動車の電池や太陽光パネル、風力タービンなどには銅やリチウム、コバルト、レアアースといった鉱物が欠かせない。このため各国政府や企業は近年、脱炭素化を進めるうえで鉱物の安定調達が急務だと説明してきた。だが今回の報告書が示すように、実際の需要の大部分は防衛産業やデータセンター、従来型の輸送といった、気候変動対策とは直接関係のない分野に向けられているとみられる。

アフリカの鉱業を巡っては、植民地時代から続く「資源は輸出、加工は域外で」という構造が長く指摘されてきた。近年、アフリカの資源国政府の一部は、国内での精製・加工能力を高めて付加価値を自国にとどめようとする動きを見せている。しかし、採掘そのものが引き起こす水質汚染や電力の偏った配分、住民の同意を欠いた土地利用といった問題は、加工の国内化だけでは解決しないという指摘が、今回の報告書からもうかがえる。

日本にとっての意味

日本はリチウムイオン電池やレアアース磁石の原料など、多くの重要鉱物を輸入に頼っており、蓄電池産業や自動車産業の競争力は海外の鉱山開発の動向に左右される。今回の報告書は、こうした鉱物のサプライチェーンの川上で、現地住民の生活基盤や水資源が損なわれているおそれを指摘しており、消費国側である日本の企業や政府にとっても、調達先での環境・人権面の状況を把握する必要性が改めて浮かび上がる。

また、報告書は「グリーンエネルギーのため」という説明が採掘拡大の主因ではないと指摘しており、日本国内でも電池材料や電子機器向けの鉱物需要が今後も伸び続けることを踏まえれば、脱炭素化の名の下に採掘の負の側面が見過ごされていないか、消費者としても目を向ける価値があるといえる。