世界の海面水温が再び観測史上最高、極域除く日平均で21.1度に
世界の海面水温が観測史上最高を再び更新した。EUの気候変動観測機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」の分析によると、極域を除く世界の海面水温の日平均値が、8月22日に21.1度に達し、2024年3月に記録した最高値21.09度をわずかに上回った。海が蓄える熱の量は増え続けており、海の生態系や漁業、沿岸地域への影響が懸念されている。
何が起きたのか
今回の記録更新は0.01度差とわずかだが、海はきわめて巨大な体積を持つため、わずかな水温上昇でも海に蓄えられる熱量としては大きな増加になる、とC3Sがまとめた2025年の欧州気候状況報告書は指摘している。同じ2025年には、海全体に蓄えられた熱の総量を示す「海洋熱容量」も、2024年に記録した過去最高を上回って更新された。直近4年間は、世界の海面水温が観測史上もっとも高い4年間になっているという。
背景
海は1980年代以降、人間活動によって生じた余分な熱の90%超を吸収してきたとされ、海の温暖化のペースは過去20年でほぼ倍になったとされる。C3Sで気候戦略を統括するサマンサ・バージェス氏によると、海面水温が著しく高い状態が続く「海洋熱波(marine heatwave)」の日数は、1990年代初頭から3倍以上に増えている。加えて現在、熱帯太平洋では極めて強いエルニーニョ現象が発達しているとされ、バージェス氏は「エルニーニョは熱を上乗せしているが、それは数十年にわたる人間活動由来の温暖化の上に起きている」と述べた。
水温の上昇は、氷河の融解に加えて水温上昇そのものによる海水の膨張(熱膨張)を通じて海面上昇を進めるほか、より強い熱帯低気圧が発生しやすい条件をつくるとされる。世界の海洋生物のおよそ25%は生息場所をサンゴ礁に頼っており、大規模なサンゴの白化・死滅は生態系全体に連鎖的な影響を及ぼしかねない。海は大気中の二酸化炭素も吸収し、気候の緩衝材の役割を果たしてきたが、バージェス氏は「緩衝の働きは続いているが、生態系と社会が払う代償は増え続けている」と述べている。
日本にとっての意味
海水温が高い状態が続くと、台風が勢力を落とさないまま日本付近まで北上しやすくなるという指摘があり、台風の進路や強さを考えるうえでの手がかりになる。水温の上昇は魚の分布や回遊時期にも影響するとみられ、日本の漁業とも関わりが深い。近年、サンマやスルメイカの不漁の一方でブリなど南方性の魚種の漁獲域が北上しているといった変化が伝えられており、その背景の一つとして海洋の温暖化が指摘されている。沖縄や奄美のサンゴ礁も、海水温上昇による白化のリスクが指摘されている海域の一つだ。こうした海洋のデータは、台風への備えや水産資源の管理を考えるうえで、押さえておく価値がある。