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米政権、ケネディセンター解体を検討 老朽化理由に円形劇場案も

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米ワシントンDCのケネディセンター改修を巡る争いが続くなか、トランプ政権は、建築家エドワード・デュレル・ストーン(Edward Durell Stone)設計のこの建物を解体し、円形劇場に建て替えざるを得なくなる可能性があると表明した。

何が起きたのか

司法省の担当官は今週、民事訴訟の書面で、今年提示した改修計画が裁判所に差し止められたままの場合、政権としてジョン・F・ケネディ・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツ(ケネディセンター)の解体を求める可能性があると述べた。書面は改修の理由としてセンターの収入不足と構造の老朽化を挙げ、この施設が「毎年数千万ドルを失い続けており」、「財政と構造の死のスパイラル」に陥っているとしている。

書面は、建物の改修と改名の取り組みが阻まれた場合、跡地に屋外円形劇場を建てる案を示した。「これらの取り組みがなければ、センターはさらに劣化して危険な老朽建築となり、取り壊しが必要になる。その後に跡地に何を建てるかが検討されることになる。たとえば、以前から一部で提案されてきた、ポトマック川を見下ろす大規模な屋外円形劇場である」と裁判所への提出書面は述べている。

書面はさらに「理事会は、トランプ大統領の尽力と威信こそがセンターの財政的存続と構造刷新の唯一の希望であると認識している」と続け、「理事会はまた、争いのない証拠が示すとおり、トランプ政権とトランプ大統領の尽力が目立つ形で認められなければ、寄付者は資金を出さず、センターは財政と構造の死のスパイラルに陥り続けると強調している」とした。

背景

ケネディセンターは1960年代に米国の建築家エドワード・デュレル・ストーンが設計し、政府の制定法によって設立・命名された、ワシントンDCを代表する文化施設だ。2019年にはスティーブン・ホール・アーキテクツによる増築も加わっている。2025年にトランプ大統領が理事会のメンバーを自らの人選に入れ替え、建物外壁に自分の名前を掲げさせて以来、この施設は論争の的になってきた。

その後、外壁の大統領名は裁判所の命令で取り外された。政権は数年間の閉鎖を要する改修構想のイメージ図を公表したが、この計画は今年に入って裁判所に差し止められている。今週は、ケネディセンターのロゴの下に「トランプ大統領により修復・改修(Restored and Renovated by President Donald J Trump)」と刻めるかどうかについて、判事が判断を下す見通しだ。

今年に入り、多くの寄付者や著名アーティストがセンターへの支援から手を引き、法廷闘争のさなかに来場者も大きく減ったとニューヨーク・タイムズは伝えている。米国建築家協会(AIA)やドコモモ(Docomomo)米国支部を含む建築団体の連合も、改修計画を巡って政権を提訴した。ケネディセンター改修は、トランプ氏がワシントンDCで進める一連の建設構想の一つで、ほかにリンカーン記念館前のリフレクティング・プールを鮮やかな青に張り替える案や、凱旋門を模した「アルク・ド・トランプ」の構想がある。

日本にとっての意味

戦後モダニズムの名建築を壊すか残すかという議論は、日本でも繰り返されてきた。菊竹清訓の旧都城市民会館は保存運動の末に2019年度に解体され、黒川紀章の中銀カプセルタワービルも2022年に姿を消した。今回の訴訟で政権を訴えた側にドコモモ(モダニズム建築の記録と保存を目的とする国際組織)の米国支部が名を連ねているように、この種の建築の価値を社会がどう扱うかは各国共通の課題だ。

ただし日本の事例が主に所有者や自治体の財政判断を巡る議論だったのに対し、ケネディセンターの場合は、政権が国立文化施設の理事会を入れ替え、建物への命名を試み、司法と正面から争っているという点で質が異なる。文化施設の運営や建築の存廃が政治権力の意向に直接左右されるとどうなるかを示す事例として、公立文化施設の運営と政治の距離という日本でも無縁ではない問題を考える材料になる。