トビリシの近未来建築「リケ・チューブ」取り壊しに抗議広がる
ジョージアの首都トビリシで、「リケ・チューブ」と呼ばれる近未来的な外観の建築複合施設の取り壊しが進んでいる。市民や建築家、保存運動に関わる人々が反対の声を上げているが、解体作業は2026年12月までに完了する予定だという。
何が起きたのか
取り壊しの対象は、トビリシのリケ公園にある「音楽劇場・展示ホール」と呼ばれる2棟からなる複合施設だ。ガラスと鋼鉄でできた近未来的な外観から、地元では「リケ・チューブ」の愛称で呼ばれてきた。19世紀の建物が街並みの基調をなすトビリシにあって、この施設は2000年代から2010年代前半にかけてジョージアが打ち出した近代化路線を象徴する存在だったとされる。
トビリシ市庁舎の建築サービス部門は2026年6月、所有者であるリケ・ドム社に解体許可を出した。解体作業は2026年7月から始まっており、完了は12月の見通しだという。ロイター通信や地元メディアの取材に対し、多くの人が施設の取り壊しに懸念を示し、観光名所であり首都の景観を特徴づける存在だと訴えているという。
背景
この施設を設計したのは、フクサス・スタジオのイタリア人建築家マッシミリアーノ・フクサスとドリアーナ・フクサスだ。2010年、当時のニカ・ギラウリ首相と、統一国民運動(UNM)出身のミヘイル・サーカシビリ大統領(職権乱用の罪で服役中。報道時点の2026年8月で収監から5年近くになる)の下で設計が依頼され、2011年に建設が始まった。
しかし2012年に保守系の「ジョージアン・ドリーム」党が政権を握ると、工事は凍結された。以来、施設は未完成のまま放置されてきたとみられる。今回の解体は、前政権の象徴的建築をその後の政権の下で取り壊すという構図とも重なり、単なる都市再開発以上の政治的な含みを持つ出来事として受け止められている可能性がある。
日本にとっての意味
直接的な経済や人の往来のつながりは薄いが、この一件は日本の読者にも通じる論点を含んでいる。日本でも、戦後のモダニズム建築をめぐって保存か取り壊しかが繰り返し争われてきた。用途が定まらないまま残された建築物をどう扱うか、観光資源としての価値と維持コスト、さらに政権交代や再開発の採算をどう天秤にかけるかという判断は、日本の自治体が現に直面しているものだ。海外の著名建築家が手がけた建物の扱いという点も、建築家の作品を文化財としてどう位置づけるかという日本の議論に重なる。