感染症・健康

妊娠中の新型コロナ後遺症、早産との関連みられず 高血圧症候群には関連の可能性

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妊娠前または妊娠中に新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long COVID)を抱えていた女性を対象にした米国の研究で、早産との関連は確認されなかった。一方、追加の分析では妊娠高血圧症候群のリスクが高まる可能性が示され、研究チームはさらなる調査が必要だとしている。

何が起きたのか

米ユタ大学の研究チームが、現地時間の8月下旬に医学誌Obstetrics & Gynecologyに発表した論文で、新型コロナからの回復者を追跡する米国の研究「RECOVER」に参加した女性のデータを分析した。対象は2021年10月から2024年1月にかけて登録された600人あまりの女性で、症状に関するアンケートに少なくとも1回答え、妊娠前または妊娠中に後遺症の可能性が「高い」または「疑われる」と分類された人たちだった。このうち約2割が「後遺症の可能性が高い」グループに該当した。

研究チームは早産(妊娠37週未満での出産)を主要な指標とし、妊娠高血圧症候群、帝王切開、NICU(新生児集中治療室)への入院、出生体重が週数に対して小さいこと(下位10%未満)を副次的な指標として比較した。その結果、早産の発生率は「後遺症の可能性が高い」グループで8.1%、それ以外のグループで9.6%となり、有意な差は確認されなかった。妊娠高血圧症候群、帝王切開、NICU入院、出生体重についても、この分析では有意な関連は見られなかった。

一方、感度分析(異なる基準で結果の確からしさを検証する追加の分析)では、妊娠高血圧症候群の発生率が「後遺症の可能性が高い」グループで39.0%、比較対象のグループで25.9%となり、統計的な関連が示された。研究チームは論文の中で、妊娠高血圧症候群との関連について「さらなる研究の必要性を示している」と述べ、この点は追加の検証が必要だとした。

背景

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に血圧が上昇する病気の総称で、重症化すると母体や胎児に深刻な影響を及ぼすことがあるとされる。今回の研究で比較対象となったのは、健康な妊婦ではなく「後遺症が疑われる」と分類された女性たちだった点に注意が必要だ。つまりこの結果は、後遺症の有無そのものというより、後遺症の可能性がより高いと分類されたグループとそうでないグループを比べたものだ。

さらに、「後遺症の可能性が高い」と分類された女性たちは、生活費の支払いに苦労していたり、食料が十分に確保できなかったり、費用を理由に受診を控えたり、医療現場で差別的な扱いを受けた経験があったりする割合が高く、妊娠前の体格指数(BMI)も高い傾向があったことが分かっている。こうした経済的・社会的な困難やBMIの高さは、それ自体が妊娠高血圧症候群のリスクを高める要因として知られており、後遺症そのものの影響なのか、こうした背景要因の影響なのかを切り分けるのは容易ではないとみられる。

日本にとっての意味

妊娠高血圧症候群は日本でも産科診療で重要視される合併症のひとつだ。妊婦健診では血圧測定が定期的に行われており、今回の研究結果は、その診療の枠組みの中で「妊娠中や妊娠前に新型コロナに感染し、症状が長引いた経験があるか」を問診の材料として加える余地があることを示唆している。

日本の産科診療では、妊娠中の新型コロナ感染とその後の経過について、患者に説明できる材料がまだ乏しいのが実情とみられる。早産との関連は今回確認されなかった一方、妊娠高血圧症候群との関連は今後の研究課題として残された。妊娠中、あるいは妊娠を予定している人にとっては、過度に不安を覚える段階ではないものの、血圧管理の重要性を改めて意識する材料として知っておく価値があるだろう。