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ノグチの大型彫刻、ビルからニューオーリンズ美術館へ寄贈

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アメリカの彫刻家イサム・ノグチが手がけた高さのある花崗岩の彫刻「ミシシッピ・ファウンテン」が、ニューオーリンズ中心部のオフィスビルから同市のニューオーリンズ美術館(NOMA)に寄贈された。2026年秋、美術館のボザール様式(Beaux-Arts、19世紀フランスで確立した壮麗な古典主義建築様式)の正面玄関に設置され、長年止まっていた噴水機能も復活する予定だ。

何が起きたのか

「ミシシッピ・ファウンテン」(1961〜62年、別名「ザ・ミシシッピ」)は、重さ約40トンの花崗岩の柱の上に三日月形の部材を載せた、装飾を排した造形の彫刻だ。作品名は、設置場所の数ブロック東を流れるミシシッピ川にちなむ。

現在はニューオーリンズの中心業務地区にあるビルの前に設置されており、これをクレーンで吊り上げ、専用の鋼鉄製の枠に収めて大型トラックで市立公園(シティ・パーク)内のNOMAまで運ぶ計画だという。

作品を所有していたベストホフ家が、美術館の彫刻庭園の整備・拡張を主導したシドニー・ベストホフ3世に敬意を表して寄贈した。NOMAでは、2013年から玄関を飾ってきたロイ・リキテンスタインの彫刻「ファイブ・ブラッシュストロークス」がこの作品と入れ替わり、同館の彫刻庭園に移される。

背景

この彫刻がもともとオフィスビルの前に置かれていたのには理由がある。ノグチは1951年から1968年にかけて、建築設計事務所スキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル(SOM)の建築家ゴードン・バンシャフトと約20年にわたり協働し、イェール大学の図書館の中庭や、マンハッタンのビルの沈床庭園など、建物と一体になった彫刻や庭園を複数手がけてきた。

「ミシシッピ・ファウンテン」も、当初は生命保険会社が入居していたビルのために制作されたものだった。ノグチは彫刻と建築の関係を切り離せないものと考えており、1968年に雑誌に寄せた文章で「彫刻家は建物の装飾家にとどまらず、意味のある空間と、その空間を規定する意味のある形を生み出すうえで、建築家の真の協働者である」と述べている。だからこそ、作品が元の建物から切り離されることに彼は強い抵抗感を示した。

1980年に別の作品「シントー」がニューヨークの東京銀行のロビーから撤去された際には、ノグチは作品を取得した収集家に対し、「本来の設置場所から切り離されたシントーは、意図された機能と意味を失い、目的を失った」と憤りを語ったという。

このビルは、地元のドラッグストアチェーンK&Bが1973年に取得して本社として使っていたが、1997年に同社が売却された後に閉鎖され、2017年に米国の歴史的建造物の登録制度に載せられた。2025年10月には売りに出されている。

ノグチとバンシャフトの協働作品が元の建物から切り離される事例は、これまでコネティカット州の保険会社本社にあった彫刻群「ザ・ファミリー」が、建物が2003年にゴルフ場と住宅の開発のため取り壊されて建物との関係を失い、2023年に競売にかけられた1件しかない。この作品は1230万ドルで落札され、ノグチ作品としての最高額を更新した。今回のNOMAへの寄贈は、そうした「作品が本来の建築的文脈を失う」流れの、これまでで2例目にあたる。NOMA館長のスーザン・M・テイラー氏は、作品がニューオーリンズの文化的景観を象徴する存在になることを願うと語っている。

日本にとっての意味

イサム・ノグチは日系アメリカ人の彫刻家で、日本国内にも作品や施設が多く、あかり(AKARI)の照明シリーズや、北海道の公園、香川県のアトリエなどで広く知られている。今回の出来事が示すのは、企業が発注した美術品は、その企業が売却されたり本社ビルが再開発されたりすると、作品と建築の一体性が失われかねないという構造的な問題だ。

実際、ノグチ自身が生前に憤慨した「シントー」の一件は、ニューヨークの東京銀行のロビーから作品が撤去された事例として記録されている。日本でも1980年代以降、企業が自社ビルのロビーや庭園に現代美術を収蔵する例が広がったとされるが、その後の合併や再開発によって、こうした作品の行き先が問われる場面は起こりうる。今回のニューオーリンズの事例は、企業美術品が公共の美術館に引き取られることで、元の文脈は失われても、より多くの人が長期的に鑑賞できる形で受け継がれていく一つの道筋を示している。