カリブ海で異例の雨季前半の干ばつ、温暖化が影響と国際研究
プエルトリコとジャマイカで2026年5月以降続く深刻な干ばつについて、国際研究者ネットワーク「ワールド・ウェザー・アトリビューション(World Weather Attribution, WWA)」が速報分析を公表した。人間活動による気候変動が、雨季前半の降雨量を減らし、今回の干ばつを起こしやすくしたと結論づけている。プエルトリコ当局は貯水池の枯渇を受けて給水制限に踏み切っている。
何が起きたのか
カリブ海地域では例年5〜6月から11〜12月にかけてが雨季にあたるが、WWAの分析によると、その最初の3か月にあたる5〜7月の降雨量が、温暖化の影響によりジャマイカで約6%、プエルトリコで約9%減少したとみられる。研究チームは、産業革命前より気温がおよそ1.4度高い現在の気候では、こうした極端な少雨がジャマイカで40%、プエルトリコで30%起きやすくなっていると推定した。英インペリアル・カレッジ・ロンドンの気候研究者セオドア・キーピング氏はWWAの記者説明会で「この3か月間の少雨は、現在の気候ではプエルトリコで50年に1度、ジャマイカで30年に1度の規模の出来事だ」と述べた。
影響はすでに広がっている。米ジョージア大学の大気科学者ポール・ミラー氏によれば、プエルトリコのサンフアン国際空港では4月から8月にかけての降水量が平年より64%少なく、過去70年で最も乾燥した期間になったという。プエルトリコでは貯水池の水位が大きく下がり、首都圏の水道利用者18万件を対象に48時間ごとの給水制限が実施された。ジャマイカでも7つの行政区で緊急でない用途への水利用を禁じる措置がとられている。
背景
プエルトリコやジャマイカのような島嶼部は、大陸の内陸部と異なり大きな河川や広大な地下水層を持たないため、少雨の影響が短期間で表面化しやすいという。ミラー氏は説明会で、こうした地形では干ばつの影響が特に早く積み重なると指摘した。
さらに水道インフラの老朽化がこの問題を深刻にしている。研究が引用したデータによれば、カリブ海地域では給水管の漏水により平均で46%、プエルトリコでは最大60%もの水が失われているという。赤十字・赤新月社気候センターの脆弱性専門家カリナ・イスキエルド・ロドリゲス氏は「老朽化した水道インフラ、とりわけ漏水の多い飲用水システムは、干ばつ時の水不足を悪化させる」と述べ、熱帯低気圧など気候関連の災害に繰り返しさらされることでインフラや対応力そのものが弱っていく点にも言及した。既存の社会的不平等や土地利用、人口密度といった要因が、自然現象が「災害」に発展するかどうかを左右するとも指摘している。
日本にとっての意味
カリブ海は日本人にとって遠い観光地というイメージが強いが、今回の研究は、温暖化が離島の水資源に具体的にどのような影響を及ぼすかを示す事例として参考になる。日本も沖縄や離島の多くで大きな河川や広い地下水層を持たず、渇水時に給水制限が行われた経験がある地域は少なくない。カリブ海地域の給水管の漏水率が平均で46%、プエルトリコでは最大60%に達するという数字は、老朽インフラが災害の被害を増幅させるという構図が、水道管の老朽化が進む日本の地方自治体にも無縁ではないことを示唆する。
また、こうした気候アトリビューション研究は、個別の異常気象がどの程度気候変動によって起きやすくなったかを統計的に示す手法として近年広く使われるようになっている。台風や豪雨など日本に直接関わる現象についても同様の分析が今後行われる可能性があり、今回のカリブ海の事例はその手法や結論の読み方を知る手がかりにもなる。