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密輸疑惑の美術商の子2人、独ハンブルクでマネロン有罪判決

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ドイツの美術商セロップ・シモニアン氏が率いていたとされるエジプト古美術品の密輸ネットワークをめぐり、同氏の子2人がハンブルクの裁判所でマネーロンダリング罪の有罪判決を受けた。裁判所は売却益から合わせて約3200万ユーロの没収と、総額12万ユーロ超の罰金を命じた。2人は判決を不服として控訴する方針だという。

何が起きたのか

AFP通信によると、現地時間の8月24日、ハンブルクの刑事裁判所は被告2人の売却益から2600万ユーロと600万ユーロ、合わせて約3200万ユーロの没収を命じ、それぞれ9万ユーロ超、3万ユーロ超の罰金を科した。判決文で被告の実名は明かされていないが、起訴内容はアブラハム・シモニアン氏とそのきょうだいのアリス・シモニアン・シャード氏に対するものと一致するという。

裁判所は、2人がクレオパトラの胸像、ツタンカーメンの名が刻まれた石碑、王女の副葬品一式などのアラブ首長国連邦の美術館への売却に関わっていたと認定した。これらはいずれもエジプトから不正に持ち出された疑いのある古美術品で、ルーヴル・アブダビに売却されたとみられる。同じネットワークからは、ニューヨークのメトロポリタン美術館が購入した黄金の石棺も出ており、これはエジプトへの返還が進められているという。2つの美術館への売却総額は7000万ユーロにのぼる。

なお、アブラハム氏に対する「盗品密売のための組織的関与」という追加の罪状は、証拠不十分として取り下げられた。2人は控訴する意向で、コメントは差し控えたという。

背景

この事件が明るみに出たのは、メトロポリタン美術館の黄金の石棺がニューヨークで押収されたことがきっかけだった。それから7年余りを経て、今回の判決がヨーロッパで初めてシモニアン家の取引に対して下されたものとなる。

捜査は、マンハッタン地区検事局の古美術品密輸対策部門トップ、マシュー・ボグダノス氏が主導した。その調べによると、シモニアン家の取引はフランス人美術商クリストフ・クニツキ氏を通じて行われており、同氏はパリで組織的詐欺の罪に問われている。2020年にはパリの裁判官がシモニアンきょうだいに対する欧州逮捕状を発付したが、ドイツの裁判所は根拠が不十分だとして身柄引き渡しを拒否した。

父セロップ氏をめぐるフランスでの裁判は、処理能力を超えた司法制度の中で停滞しているとされ、同氏は2025年3月、パリでの15か月の未決勾留を経て、フランスの刑事手続きが行き詰まったことを受けてハンブルクに戻った。現在84歳になる。

アブラハム氏は父の事業を継いだ立場ではないと主張しているが、捜査当局は同氏が2013年ごろから事業への関与を強めていたとみている。判決によれば、アリス氏は2017年、ツタンカーメンの石碑の売却額850万ユーロのうち640万ユーロを受け取った。一方、ハンブルクの検察資料をアート・ニューズペーパー誌が入手したところでは、事業収入の大半はアブラハム氏に渡っていた。

2014年、同氏は王女の棺とファイユーム肖像画についてルーヴル・アブダビに450万ユーロを請求した際、これらを「祖父母からの贈り物」だと説明していたという。仲介手数料を差し引いた380万ユーロが、同氏のハンブルクのフォルクスバンク口座に入金された。2018年には、記録的な3500万ユーロで同美術館に売却されたクレオパトラの巨大な大理石の頭部像でも同様の手口が使われ、同氏の取り分は2350万ユーロだったとされる。

一家が保有していた約200点の古美術品の在庫は後にアントワープに移され、2021年6月に押収された。警察の記録では所有者名はアブラハム氏となっている。また2020年には、ドイツ当局が同氏の6つの銀行にまたがる複数口座から460万ユーロ、加えて1650万ユーロ相当の不動産を差し押さえた。ハンブルクの邸宅からは、数十点の古美術品や約200枚の古代金貨(推定40万ユーロ相当)、高級腕時計のコレクションも見つかっている。

日本にとっての意味

この事件は、来歴(プロヴェナンス、provenance=美術品の所有者や取得経路の記録)が偽装された古美術品が、正規の美術館の取得プロセスをすり抜けて世界的な美術市場に流通していた実態を示している。「祖父母からの贈り物」という説明でルーヴル・アブダビが数千万ユーロ規模の作品を購入していた経緯は、著名な美術館でさえ来歴確認だけでは密輸品を見抜けない場合があることを物語る。日本の美術館や個人収集家も、国際的な古美術品市場で作品を購入する際には同様のリスクにさらされている。

エジプトなど文化財流出国は近年、盗掘・密輸品の返還要求を強めており、来歴に疑義のある作品を収蔵していた場合、後になって返還や法的責任を問われる事例は世界各地で相次いでいるとされる。文化財の不正な輸出入や所有権移転を規制する枠組みとしては1970年のユネスコ条約があり、日本も2002年に同条約を締結し、国内実施法として「文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律」を施行している。今回のようなケースは、購入前の来歴調査を徹底することの重要性を、日本の美術関係者にも改めて示すものといえる。