腎臓病・肝疾患合併の新型コロナ患者、レムデシビル早期投与で死亡リスク低下
新型コロナウイルスに感染し、腎臓病または肝疾患を併せ持つ入院患者に対して、抗ウイルス薬レムデシビルを早期に投与すると、28日以内の死亡リスクが約25%低下するとの研究結果が発表された。米イリノイ大学と製薬会社ギリアド・サイエンシズの研究チームが、医学誌クリニカル・インフェクシャス・ディジージズに現地時間9月1日付で報告した。
何が起きたのか
研究チームは、2021年から2025年にかけて米国で新型コロナのため入院し、腎臓病または肝疾患と診断された成人患者の医療請求データと入院費用データを分析した。腎臓病を持つ患者は2万2378人(レムデシビル投与群、非投与群とも1万1189人)、肝疾患を持つ患者は5026人(各群2513人)が対象となった。腎臓病群には、投与開始前の1年以内に腎代替療法(人工透析など)を受けた患者が含まれ、肝疾患群には肝損傷、肝硬変、肝不全、非感染性の肝炎などを抱える患者が含まれている。
入院後最初の2日間に酸素投与を受けたかどうかで患者を分類したところ、両群とも約7割が酸素投与を必要としていた。全体では、レムデシビルを早期投与された患者の28日以内の院内死亡リスクは、腎臓病群で25%、肝疾患群で24%、それぞれ低下した。酸素投与を受けた患者に限ると、腎臓病群で25%、肝疾患群で26%の低下が見られた。特に酸素投与を受けなかった肝疾患患者では死亡リスクが49%低下し、効果が際立った。一方、酸素投与を受けなかった腎臓病患者では、統計的に意味のある差は確認されなかった。
研究チームは論文で「レムデシビルは主に肝臓で代謝されるため、投与前と投与中に肝機能検査を行うことが推奨される」としたうえで、それでもなお今回の研究は、腎臓と肝臓のいずれの基礎疾患を持つ患者についても、新型コロナ治療としてレムデシビルを使う根拠を補強するものだと結論づけている。
背景
レムデシビルは点滴で投与する抗ウイルス薬で、新型コロナウイルスの増殖を抑える働きがあるとされる。パンデミック初期から重症患者の治療薬として各国で承認されてきた。ただし、これまでの主要な臨床試験の多くは、腎臓や肝臓に重い基礎疾患を持つ患者を除外して実施される傾向があったとみられ、こうした患者層での有効性や安全性のデータは比較的少なかった。腎臓病や肝疾患があると、薬の代謝や排出の経路が健常者と異なるため、効果や副作用の出方が変わる可能性があり、投与の可否や用量調整に慎重な判断が求められてきた経緯がある。
今回の研究は、実際の診療データ(リアルワールドデータ)を大規模に分析する手法で、これまで臨床試験では検証しにくかった合併症患者における薬効を確かめようとしたものといえる。酸素投与の有無で患者を分けて分析している点も特徴で、症状の重さによって薬の効果に差が出るかどうかを見極める狙いがあったとみられる。
日本にとっての意味
日本でも慢性腎臓病や慢性肝疾患を抱える人は少なくなく、高齢化に伴い透析治療を受けている患者や、脂肪肝・肝硬変などの肝疾患を持つ患者は今後も一定数存在し続けるとみられる。新型コロナウイルスは依然として国内で流行を繰り返しており、こうした基礎疾患を持つ人は重症化のリスクが相対的に高いとされてきた。今回の知見は、そうした患者に対してレムデシビルを早期に使う判断を後押しする材料になり得る。
日本国内でもレムデシビルはすでに新型コロナの治療薬として承認され、医療現場で使用されてきた。今回の研究結果がそのまま国内の診療指針を変えるとは限らないが、腎臓病や肝疾患を持つ患者への投与をためらう医師や、投与量・検査体制の判断材料を探す医療従事者にとっては、参考になるデータといえるだろう。研究チームが指摘するように、レムデシビルは肝臓で代謝されるため、投与前後の肝機能検査は引き続き重要になる。基礎疾患を持つ患者やその家族にとっても、治療の選択肢を医師と相談する際の一つの手がかりになりそうだ。