中国で子ども2人がH9N2型鳥インフルエンザに感染、生鳥市場で接触か
中国本土で、生きた鳥を扱う市場で鳥に接触した子ども2人が、鳥インフルエンザの一種であるH9N2型に感染していたことが分かった。世界保健機関(WHO)が最新の報告でこの2例を明らかにした。そのうち1人はすでに退院している。
何が起きたのか
WHOによると、2例はともに中国本土の子どもで、生きた鳥を売買する「生鳥市場」で鳥との接触歴があるという。1人目は安徽省の5歳未満の男児で、現地時間の8月3日に発症し、入院したが、すでに退院している。2人目は北京での感染例で、現地時間の8月21日から27日までの期間に報告された。この北京の症例については、場所と報告時期以外の詳しい情報は示されていない。
WHOの集計では、2015年以降、西太平洋地域でこれまでに179例のH9N2型ヒト感染が報告されており、そのうち176例が中国本土、2例が台湾、1例がベトナムからの報告となっている。死亡例は2例あり、いずれも基礎疾患を持つ患者だったとされる。今回の2例がこの累計に含まれるかどうかは、WHOの報告からは明らかではない。
背景
H9N2型は、ニワトリなど家禽の間で世界的に広く見られる鳥インフルエンザウイルスの型の一つで、鳥に対しては比較的病原性が低い「低病原性」に分類されるとされる。鳥が目立った症状を出さないまま感染を広げることがあるため、養鶏場や市場で気づかれずに循環し続けやすいという指摘がある。
生きた鳥を売買する生鳥市場は、複数の種類の鳥や、時には他の動物までが一つの場所に持ち込まれ、人とも近い距離で接触する環境になりやすい。こうした場所は、異なるウイルス同士が同じ個体の中で混ざり合い、遺伝子の一部を交換する「遺伝子再集合(リアソートメント、reassortment)」と呼ばれる現象が起きやすい場とみられている。
H9N2型そのものはヒトに対して重症化しにくいとされる一方で、ウイルスの内側の部品にあたる遺伝子の一部が、H7N9型のような、ヒトに感染すると重症化しやすい別の鳥インフルエンザの型に取り込まれている可能性が指摘されている。つまりH9N2型は、それ自体の症状の軽さとは別に、より危険な新型ウイルスが生まれる際の「部品の供給源」になりうるとみられている。これが、各国の保健当局が軽症の型であっても発生状況を継続して追跡している理由の一つとされる。
日本にとっての意味
日本では例年、冬場を中心に高病原性の鳥インフルエンザが渡り鳥を通じて養鶏場に持ち込まれ、感染が確認された農場では鶏の殺処分が行われるとされる。これは鶏肉や鶏卵の価格や供給に直結する問題として、毎年のように報じられている。今回のH9N2型は日本国内で問題になっている高病原性の型とは異なるが、鳥インフルエンザウイルス全般を継続的に監視する体制の一部として、こうした軽症の型の発生も国際的に注視されている点は共通する。
日本の検疫では、生きた鳥の持ち込みや家禽製品の輸入について一定の規制が設けられているとされ、海外で発生した鳥インフルエンザの情報は、そうした水際対策の維持や見直しの判断材料になる。また、中国など生鳥市場が広く存在する地域へ渡航する際には、生きた鳥や家禽との接触を避けることが感染症対策として一般に勧められている。今回のような軽症例の報告が続くこと自体が、より危険な新型ウイルスの出現を早期に察知するための監視網の一部であり、日本の家禽対策や検疫の背景にある国際的な警戒態勢とつながっている。