米エメコ、フォスター設計の椅子巡りザラホームを提訴
米国の家具ブランド、エメコが、建築家ノーマン・フォスター氏が同ブランドのために設計した椅子とスツールを模倣されたとして、スペインのザラホームに対する法的手続きを始めた。訴えはドイツのハンブルク地方裁判所に今年前半に出されており、ザラホームが「20-06コレクション」の製品の「外観と保護されたデザイン言語を不法に複製した」と主張している。
何が起きたのか
エメコが問題にしているのは、ザラホームの「ステンレス・スチール・ストラクチャー・チェア」と「ステンレス・スチール・バー・スツール」で、自社の「20-06チェア」と「20-06スツール」のデザインを侵害していると訴えている。「私たちは、独創的なデザインと、創造と製造のプロセスの誠実さを守ることに力を注いでいる」と、エメコのグレッグ・ブッフビンダー会長は述べた。Dezeenはこの訴えについてザラに見解を求めたが、同ブランドはコメントを控えた。
20-06は2006年の発表で、フォスター+パートナーズ創設者のフォスター氏が、1944年に米海軍向けに開発されたエメコの代表作「1006 ネイビーチェア」の現代版として設計した。エメコとザラホームの製品はどちらも金属仕上げの椅子とスツールで、座面が前脚の上に回り込む形も共通する。一方で、エメコの20-06は80%再生アルミニウムの角パイプで脚とフレームを作るのに対し、ザラホームの製品は丸いステンレス鋼管製だ。
エメコによると、提訴に先立って製造中止と損害賠償を求める通知をザラホームに送ったが、ザラホームは製造中止の求めに応じなかったという。訴訟では、損害賠償に加え、2つの製品の販売差し止めを求めている。
背景
エメコは、大企業が売れ行きの良いデザイン製品の類似品を作る慣行は、小さなブランドを食い物にするものだと主張する。「巨大な国際チェーンは、リスクを減らし、市場投入を早め、革新に必要な莫大な投資を避けるために、より小さな会社の知的財産をしばしば流用する」とブッフビンダー氏は言う。「大手小売はデザインが市場で実証されるのを待ってから複製することが多い。そうすることで、独創的な製品を確立するまでの不確実性や開発費、市場を育てる年月を回避する。事実上、エメコのような会社が、グローバルチェーンのための無給の研究開発機関にされている」
ファストファッションやファストインテリアの大手と、デザインを資産とする家具メーカーの間では、同種の紛争が繰り返されてきた。今回の訴訟は、椅子1脚の形をめぐる争いであると同時に、デザインへの投資を誰が回収するのかという業界構造の問題提起でもある。
日本にとっての意味
エメコのネイビーチェアや20-06は日本でもインテリアショップを通じて販売されており、なじみのあるブランドの紛争だ。日本の制度では、家具の形は主に意匠権で守られ、2020年4月以降の出願では権利は出願日から25年で切れる。権利が切れた名作椅子の複製は「リプロダクト」「ジェネリック家具」として国内でも広く流通しており、どこまでが正当な複製で、どこからが現役ブランドのデザイン流用なのかという線引きは、日本の消費者にも身近な問題といえる。
今回のように発表から20年しかたっていない現役製品をめぐる争いでは、権利の有効期間や、不正競争としての保護の範囲が国によって異なることが結果を左右する。海外ブランドの家具を輸入・販売する日本の事業者にとっても、類似品をめぐる欧州の判断は、取り扱い商品の選定やリスク管理の参考になる。