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陶器の贋作、地球磁場の痕跡で見破る新手法を米チームが発表

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米カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所の研究チームが、地球磁場の記録を使って古代の陶器が本物か偽物かを判定する新手法を開発した。8月31日付で米科学アカデミー紀要(PNAS)に論文が掲載された。学芸員や考古学者の仕事、そして違法な古美術品取引の取り締まりにも役立つ可能性があるという。

何が起きたのか

研究チームは、粘土を焼いた際に生じる磁気の痕跡を利用し、陶器の年代を見分ける手法を確立した。粘土に含まれる強磁性鉱物は、窯で焼かれて冷える際、地球の磁北極の方向に向きをそろえる。この痕跡は「熱残留磁化(thermal remanent magnetization、TRM)」と呼ばれる。磁北極の位置は数百年、数千年単位で少しずつ移動しているため、古い陶器のTRMは現代の陶器とは異なる方向を指す。

さらに、陶器は焼成後も長い年月のあいだ周囲の磁場にさらされ続ける。その結果、粘土の一部の鉱物には、より弱い二つ目の磁気の記録が刻まれる。これは「粘性残留磁化(viscous remanent magnetization、VRM)」と呼ばれ、100年以上前から知られていた現象だが、信号が弱いため、TRMを測定する際のノイズとして扱われるのが一般的だった。

研究チームはこのVRMに着目した。陶器を約10℃刻みで加熱し、VRMの記録が消えて完全にTRMだけになる温度を調べたところ、千年以上前に焼かれた陶器はVRMを消すのに少なくとも約112℃まで加熱する必要があった一方、現代の陶器はより低い温度でVRMが消えることが分かった。

実験には、発掘された古代の陶器片4点、古代ユダ王国の貯蔵用の壺15点、伝統的な窯で焼いた現代の陶器6点、現代の窯で焼いた粘土製の印章16点、エルサレムで売られている土産物の陶器4点の合計45点が使われた。研究チームはさらに、イスラエル考古局が押収した真贋不明の陶器3点にもこの手法を試し、いずれも古代に焼かれたものとみられるとの結果が出たとしている。

背景

古美術品の贋作は、イスラエル、中国、メキシコなど、遺跡が豊富な国々で後を絶たない問題とされる。論文の共著者の一人であるリサ・トークス氏は、不正が横行する地域で特に贋作が広がっていると指摘している。真贋の判定は従来、様式や成分分析などの手法に頼ることが多いとされ、精巧な偽物を見抜くのは難しく、法廷でも決着がつかないことがある。論文では、イエス・キリストの兄弟のものとされ、真贋が争われた「ヤコブの骨箱」の事例が挙げられている。7年に及ぶ裁判の末、裁判所は、偽造が合理的な疑いを超えて証明されたとは言えないと判断した、と共著者らは記している。

共著者のヨアブ・ヴァクニン氏は考古地磁気学を専門とし、以前から陶器の磁気を使った年代測定に取り組んできた。今回の手法の利点は、精密な年代を出す必要がなく、古いか新しいかを見分けるだけでよい点にあり、比較的簡便に判定できるとされる。ただしヴァクニン氏は、研究者は論文を公表するが贋作者はひそかに仕事をするため、手法を公表すればするほど贋作者がそれを回避する工夫をする可能性があるとも述べており、鑑定技術と偽造技術のいたちごっこという構図がうかがえる。

日本にとっての意味

日本にも、陶器の真贋が社会問題になった有名な事件がある。鎌倉時代の古瀬戸の傑作として1959年に国の重要文化財に指定された瓶子「永仁の壺」は、指定直後から現代作ではないかとの疑いが持ち上がり、1960年に陶芸家の加藤唐九郎が自作だと表明した。文化財保護委員会が蛍光X線分析で釉薬の元素比率を調べたところ鎌倉時代のものと異なり、位相差顕微鏡による観察でも数百年分の経年変化が認められず、1961年4月に重要文化財の指定は解除された。様式鑑定だけでは見抜けなかった贋作に科学分析が決着をつけた点で、今回の研究と重なる構図の事件だった。

日本では土器や陶磁器の年代判定に、焼成時にリセットされる蓄積エネルギーを利用する熱ルミネッセンス法が研究・応用されてきており、真贋判定への適用例も報告されている。磁気の記録を使う今回の手法は、これらと異なる物理量に基づく判定手段が増えることを意味し、古陶磁の取引が盛んな日本の古美術市場や、収蔵品の来歴確認を進める美術館にとっても、参照する価値のある成果と言える。