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NYのシェア自転車を減速させる装置、家賃負担を体で感じる試み

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米ニューヨークのアーティスト、ジャスティン・ブラインダー氏が、市のシェア自転車「Citi Bike」が「住宅圧力の高い」地区を通ると減速する装置を作った。「グラウンド・トゥルース(Ground Truth)」と名付けたプロジェクトで、データとデザインの経歴に、自転車便の配達員として市内を走り回った自身の経験を重ねて生まれた。

何が起きたのか

装置は3Dプリントで作られた小さな灰色の箱で、Citi Bikeの前輪フォークに挟んで取り付ける。中身は主に4つの部品で、小型コンピューター「ESP32S3」、ブラインダー氏のデータセットを収めたSDカード、GPS、そしてブレーキに手を伸ばす小さなアームの付いたサーボモーターだ。工業デザイナーと組んで設計し、最小限の手間で着脱できるようにした。

仕組みはこうだ。GPSで現在地を拾い、その地区の「家賃負担率」、つまり世帯収入に占める家賃と光熱費の割合に応じて、前ブレーキに張力をかける。プロジェクトの説明には「住宅圧力の高い地区ほど強い抵抗がかかり、手頃な地区では張力が緩む」とある。装置の小さな画面には、走っている地区の家賃負担のパーセンタイルと、プロジェクトのウェブサイトにつながるQRコードが表示される。

データの主な出どころは米国の地域社会調査(American Community Survey)で、収入に占める家賃の割合の中央値と、収入の半分以上を住居に充てている賃借世帯の割合を組み合わせた。ブラインダー氏によれば、データは非常に局所的で、ブロックが変わるだけで数字が変わることもあるという。

安全上の理由から、装置は実際の公共のCiti Bikeには取り付けられていない。代わりに、ブルックリンのインキュベーター「Idle Hands」の協力でグループツアーを開き、志願者が装置付きの自転車でプロジェクトを体験する形をとる。ブラインダー氏は将来的にこの装置をオープンソース化し、誰もが自分の「グラウンド・トゥルース」装置を作れるようにしたいと考えている。

背景

出発点は配達の日々だった。「街が地図のようには感じられなくなり、まったく性質の違う条件が次々に現れる連なりとして感じられるようになった」とブラインダー氏はDezeenに語る。そこから「住宅の手頃さが、都市の上に描き込む地図ではなく、実際に通り抜けなければならない地形の一部になったとしたら?」という問いが生まれ、住宅データを物理的な体験に変えるこのプロジェクトになった。

同氏は「建てられた環境に埋め込まれた複雑な政策の中で、住宅の手頃さがどんな姿をしているのかを目で理解するのはとても難しい」とも話し、家賃負担の統計の中で市営住宅(NYCHA)の住民がどう表現されるかといった問題意識も挙げている。「都市のインフラは機能として経験されるだけでなく、その場所が誰のためのものか、誰のために作り替えられようとしているのかという社会的な信号としても経験される。同じ自転車レーンや自転車ドックが、ある人には移動手段や安全を意味し、別の人には立ち退きを意味する」

住宅の手頃さを目に見える形にする試みは他にもある。スウェーデンでは開発会社と広告会社が極小住宅の実物で住宅危機を体感させる企画を行い、ニューヨークでは市長ゾーラン・マムダニ氏が住宅の手頃さ問題を受けて離れ・増築住戸(ADU)の施策を打ち出している。

日本にとっての意味

家賃負担というテーマは、日本の都市生活者にも人ごとではない。東京23区の単身者向け賃貸マンション(30平方メートル以下)の平均募集家賃は2026年3月時点で約11万2000円と前年同月比13%上昇し、過去最高の更新が続いている。負担が統計の数字として積み上がる一方で、日々の暮らしの中では「見えにくいまま」進むという構図は、ニューヨークと共通する。

ブラインダー氏の装置は、その見えにくいデータをブレーキの重さという身体感覚に翻訳した点に核心がある。シェアサイクルが通勤や配達の足として定着した日本の都市でも、誰もが触れるインフラに都市データを重ねるという発想は、住宅費の議論を統計の外へ連れ出す方法の一つとして参考になる。